桐生の砂は盆栽に適している。排水性に優れたこの山砂は赤玉土と混ぜて盆栽用土として使われ、海外にも輸出される。地元の砂が海外でも愛用されていると思うとうれしく、少し誇らしい。今回は地元に目を向け、群馬と盆栽のゆかりを紹介したい。

 お手本となる樹木が身近にあり自然豊かな群馬は盆栽が盛んである。盆栽会も他県に比べて多い。3月に県庁で開催される「群樹展」をご覧になれば、丹精して育てられた盆栽から愛好家の熱意を感じ取ってもらえるだろう。この土壌は、史上最年少の12歳で国内最高峰の「国風盆栽展」入賞を果たした若きヒロイン、高崎市在住の清水ちえりさんを生んだ。

 2020年度の文化庁長官表彰を受けた小林國雄氏は旧利根村の出身である。小林氏が創設した春花園BONSAI美術館(東京都)は世界中の愛好家が憧れる理想郷であり、来館者は年間3万人を超える。これまで200回以上海外に赴き、世界各国から慕って訪れる弟子たちを育て上げ、弟子たちもまた自国に戻り盆栽を啓発している。長年にわたって盆栽文化を精力的に普及してきた功績がたたえられた。

 古くは、盆栽を学術的観点から探究した新聞記者、金井紫雲が高崎市出身だ。1924(大正3)年に出版された『盆栽の研究』は、それまでの書籍が盆栽の培養法のみを記していた中、金井が表現する「文学的趣味」を加味して書かれた斬新な内容だった。

 さらに桃山時代にさかのぼると、上野国の佐野(現在の高崎市)を舞台に盆栽を介した人情が語られる能曲「鉢木」が創作されている。零落した武士、佐野源左衛門常世は大雪の中で宿を乞うた旅僧(実は時の最高権力者、北条時頼)を泊め、まきの代わりに秘蔵の梅と桜、松の鉢木を切って火にくべ、もてなす。後に「いざ鎌倉」と参じた常世はそこで時頼と再会し、宿の礼にと梅、桜、松にちなんだ名前の所領を授かるという話である。盆栽を慈しんだ群馬の侍が、それ以上の愛情で見知らぬ人をもてなす話が描かれていたとは感慨深い。

 私が所属する日本盆栽協会桐生支部の存在も挙げたい。「ガマズミの実は透明感があって何とも言えないかわいらしさでね」「春の芽摘みの時季には朝起きるのが楽しみ」など、会員との会話は盆栽への愛情にあふれる。四季折々に詩的な色合いを帯びた言葉は世俗を忘れ、すがすがしい気持ちにさせてくれる。手作りの菓子を頂いたり、時には人生相談に乗っていただいたり、盆栽を介した縁を幸運に思う。会の運営についても適宜適切な助言を受け、おおらかな心持ちで見守っていただいている。その心遣いは息長く愛情を降り注いで盆栽を育てる姿に重なる。

 群馬と盆栽。人情と自然美。粋な組み合わせである。

 【略歴】2018年に盆栽を始め、19年からインスタグラムで魅力を発信。フォロワーは国内外で2万人超。21年、日本盆栽協会で2人目の女性支部長に選出された。

2022/1/17掲載