▼1982年から翌年にかけ、草津白根山は計5回の噴火を繰り返した。当時はまだ駆けだしのころ。同山は担当エリアにあり、初めての火山活動取材に戸惑いつつ対応したのを覚えている。水蒸気爆発などの言葉を知ったのもこのときだ

 ▼特に83年11月13日は規模が大きかった。人頭大の噴石が数個、駐車場のアスファルトに穴を開けた。火口湖・湯釜の登山道わきには直径1メートルの噴石もあり、エネルギーのすさまじさをうかがわせた

 ▼大自然の鼓動の前に、人間の力など取るに足らないものなのだろう。四季折々の景観美をつくり出す山々は、一方で人を寄せつけない荒々しく冷酷な動きを見せる。それは噴火活動に限ったことではない

 ▼富山県立山町の北アルプス・真砂岳(2861メートル)では幅約30メートル、長さ約600メートルにわたって雪崩が起き、巻き込まれた男女7人が死亡した。現場付近は「雪崩の巣」と呼ばれる危険地帯だったらしい

 ▼物理学者の寺田寅彦は、大地は深い慈愛をもつ「母なる土地」であると同時に、しばしば鞭(むち)をふるってわれわれの心を引き締める「厳父」としての役割も務めると指摘している

 ▼種々の自然災害が過去繰り返されてきた。県内の地中にも火山や地震、風水害など、数多くの被災の爪痕が眠っているという。「厳父」の怖さを肝に銘じ、常に身構え油断しないことだ。