▼室町時代の京都の街とそこに暮らす人々を、空から眺めるようにとらえた詳細な屏風(びょうぶ)絵を見たときの驚きは忘れられない

 ▼2年前、県立歴史博物館であった企画展「洛中洛外図屏風に描かれた世界」。本県で初公開だった国宝「上杉本 洛中洛外図屏風」の迫力に引き付けられ、時がたつのを忘れるほどだった

 ▼〈絵の前で叫びだしたくなったのは、それが初めてでした〉。独創的な都市鳥瞰図で知られる桐生市出身の画家、山口晃さん(44)は、東京芸大在学中、上杉本と並び称される「舟木本 洛中洛外図屏風」の実物を前にしたときの感動を、著書『ヘンな日本美術史』(祥伝社)で紹介している

 ▼優れた評論に贈られる小林秀雄賞を受賞したばかりの同書では、「鳥獣戯画」や雪舟の作品などを実作者の視点でユーモラスに、ときに辛辣(しんらつ)に論じている

 ▼「洛中洛外図」の絵師の技をたたえる言葉が、ことに胸に残った。〈絵描きは基本的に嘘つきです。ただ、その嘘は見た人の心の中にこそ「本当」が焦点を結ぶように事実を調整した結果なのです〉

 ▼平等院に襖(ふすま)絵を納めるなど、活動の枠を広げる山口さんの全体像を紹介する個展「画業ほぼ総覧―お絵描きから現在まで」(県立館林美術館)が楽しい。過去と現在が混在する遊び心に満ちた作品にふれ、屏風絵を見たときの記憶がよみがえった。