さえずりながら上空を気持ちよさそうにホバリングするヒバリや、蜜を求めて花の周りを舞うモンシロチョウを、前橋市街地でほとんど見掛けなくなったと知って驚いた

 ▼身近な存在だった動植物がいつの間にか姿を消し、気象庁が約70年続けてきた「生物季節観測」の対象が昨年大幅に縮小された。前橋地方気象台周辺ではヒグラシやモズ、キアゲハ、赤とんぼも4、5年前から観測できないという

 ▼対象生物の発見や標本木の確保が困難になるほど、全国各地の観測所周辺で都市化が進んでいる。その一因が、農業従事者の高齢化や担い手不足を背景にした、農地の縮小・荒廃であることは論をまたないだろう

 ▼2020年の本県の田畑面積は6万6800ヘクタールで10年前から11%減少した。一方、荒廃農地は17%増の9058ヘクタールで、うち6883ヘクタールは再生利用が困難とされる

 ▼気掛かりなデータがある。農地周りの草刈りや水路の補修といった地域活動に支払われる交付金の利用状況だ。交付対象となっている農振農用地の割合(20年)が本県は29%で、全国平均を19ポイント、関東平均を6ポイント下回っている

 ▼農業の衰退は小動物の生息域の変化だけでなく、有害鳥獣による被害の拡大や、水源や美しい景観、伝統文化の消失など多方面に影響を及ぼす。農業がもたらす恵みをこれ以上減らさないために、われわれに何ができるのか考えていきたい。