▼煉瓦(れんが)への熱い思いが伝わってくる対談に引き込まれた。1996年11月初め、前橋市出身の詩人、評論家、伊藤信吉さんと画家、小説家の司修さんが前橋に残る明治、大正期の建築物を巡り、語り合ったときのことだ

 ▼とりわけ時間をかけて見たのは、繭の保管庫として使われた煉瓦づくりの旧安田銀行担保倉庫(同市住吉町)。残されていたことに加え、繭のにおいが2人の郷愁を誘ったようだ。「記念館のようなものに使ってみては」「喫茶店、ビアホールなどにして、若い人が気軽に訪ねてくる施設に」などと述べ合った

 ▼糸の町前橋をしのばせる煉瓦倉庫が次々と失われていくことに何とか歯止めをかけたいという強い思いが、保存、活用の道筋まで言及させたのだろう

 ▼築100年を迎えるこの倉庫で、初めての美術展「明治生まれの群馬の画家展」が26日まで開かれている。市内のコレクターが所有する山口薫、横堀角次郎らの作品が、粉をふいたような色調になった古い煉瓦とよく調和している

 ▼前橋空襲で焼失を免れた建物は、繭保管の役割を終えても取り壊されることなく、2004年に国登録有形文化財になり、昨年、「ぐんま絹遺産」に登録された

 ▼管理する協同組合商品市場の担当者はこれからも展示を企画したいという。歴史を物語る建物にふさわしい活用が、まちを豊かにする。