▼博物学者の南方熊楠が『十二支考』で〈セイロンに行わるる獅(しし)と亀の競争〉の物語を紹介している。亀は、獅が川を飛び越えるより早く泳ぎ渡ってみせると言う。そして約束の日―

 ▼獅が川を飛び越えると、亀はすでに対岸にいた。獅が戻って来ると、やはり亀がいる。実は2匹の亀が両岸に分かれていたというお話で、亀の知略家ぶりが描かれる

 ▼イソップ童話のウサギと亀は、みどり市東町(旧勢多東村)生まれの石原和三郎が作詞した唱歌でもおなじみだ。こちらの亀からは、辛抱強く着実に励めば事を成就できるという教訓が導き出されよう

 ▼きのう企業や官庁で入社・入庁式が行われ、大勢の若者が社会人の仲間入りをした。日本生産性本部によると、本年度の新入社員のタイプは「ロボット掃除機型」だとか

 ▼部屋の隅々まで効率的に動き回り家事などの時間短縮に役立つ機能が、就活期間が短縮された中で効率よく動き回ったことに重なるという。一方で段差に弱く、亀のごとく裏返しになってもがき続けることも

 ▼景気回復への期待が高まるが、不透明感も依然残る。新入社員はまずは辛抱の力で励み、徐々に知恵も働かせてほしい。むろん能力の発揮には「職場のフォローや丁寧な育成が必要」(同本部)だ。段差に立ち止まったり、裏返しになりそうなときは遠慮なく上司や先輩に頼ろう。