前回(昨年11月26日付)は「気を付けたい高所作業」と題し、労働災害について述べました。今年1月2日からフルハーネス型の墜落制止用器具の装着が義務化されることも紹介しましたが、読者の方から「知らなかったので読んで良かった」と反響があり、器具の認知度を高めることにもなりました。まだ知らない人のためにも墜落の注意喚起は必要だと再認識しました。

 そして、義務化開始の翌日、3日付の上毛新聞社会面にタイムリーな記事が載っていました。「群馬労働局が年末一斉監督/建設現場/6割で違反」の見出しで、労働安全衛生法違反の状況をまとめた内容です。それによると50の現場で、手すりを設置しないなど墜落災害の防止に関する違反があったそうです。

 県内で墜落災害の防止違反が50現場とは、予想をはるかに超える数です。労災事故はちょっとした気の緩みで発生します。われわれは違反から起きた数々の事故を忘れてはいけません。労災は働く誰もが無関係ではありません。国民が一丸となって見つめ、その防止策を検討し、実行することが重要です。

 私は大学で労働安全衛生や地域安全を研究しており、建設業を志す学生に対し、労災について話すことがあります。2020年の労災による死亡者数を業種別でみると、建設業が最も多い値です。19年も同じです。

 このことから、建設業を志す学生は労災防止をどの業種よりも意識する必要があります。しかし1年生に「労働災害という言葉を知っていますか?」と聞くと、多くは「知らない」と答えます。建設業界で働くことを思い描いているとはいえ、実際に学ぶまでは労災に関する知識がないのは当然かもしれません。

 例えば、建設業では荷物をトラックで運搬し、トラックに付いている移動式クレーンで荷物の上げ下ろしの操作を行います。操作には資格が必要です。この資格を管轄する機関について、自動車運転免許と同じだと勘違いしている方が意外と多くいます。クレーンの資格は労災防止関連の資格に位置付けられ、管轄は基本的に厚生労働省です。クレーンによる労災が発生したことに起因します。

 労災やその防止策は、知っているようで知らないことが多い。それが実態です。労災に遭わないためには正しい知識を身に付ける。これしかありません。大学で労災に関する事柄を教えていて、労災を減らすにはもっと早い段階から教育が必要だと感じています。小さい頃から「労災」を意識させ、「安全」を考えさせる。新たな教育的な取り組みが必要です。

 今こそ、労災防止のため、教育機関・行政機関・労働現場の三位一体となった安全教育の実施を!

 次回は、「えっ! 驚きの労災関連資格」の予定です。

 【略歴】専門は力学など。労災予防や構造物の維持管理などを研究し、日本クレーン協会群馬支部で講師を務める。東京都出身。東京都立大大学院修士課程修了。

2022/1/24掲載