「くじ引きで役員になってしまった」「有給休暇まで取って活動に参加するなんて」「あの人は全く活動せず、不公平」―。耳にするうわさ話や、会員制交流サイト(SNS)で目にする投稿文には、PTA活動に関するネガティブな意見が目立つ。少子化に歯止めはかからず、共働き世帯やひとり親家庭など家族形態は多様化。PTAの活動も時代に合わせて変化が求められるが、現状はどうもそうではないらしい。当事者の思いや取り組みを追い、実態を探った。

前例踏襲

 西毛地区に住む3人きょうだいの母親(41)は、PTA活動について「喜びが分かち合える活動ならいいが、目的や意義がはっきりしないまま押し付けられると、心理的安全が確保されない」と指摘する。

 本年度、長女と次女が通う小学校のPTAに学年委員として関わっている。毎年恒例のベルマーク収集では、学校で何時間もかけて企業ごとに分別。3密を防ぐため、分別した大量のベルマークを持ち帰り、自宅で数えた。「夢にまで出てきた」と笑う。

 中には、ただ漫然と作業することに疑問を抱き「お金を集めればいいのでは」と不満を口にする保護者もいるという。

 この母親は「必要性を説明されないまま、前例踏襲で行うからではないか」と感じている。活動を通して横のつながりができるほか、子どものためにと考えればやりがいもあるとしつつ、「より良い活動にするには時代に合った活動に見直すべきだが、責任問題に発展しかねず言い出しにくい」と打ち明けた。

 役員選出に苦慮する学校も多い。じゃんけんやくじ引きで決めるほか、会議を欠席した人が指名されるような事態が起こり得る。自薦の場合も簡単ではない。

 「選出に無駄な時間をかけず、できる人がやればいいと思うのだが」とつぶやくのは高崎市内の40代男性。自営で時間的にも融通が利くため、役員を請け負うのはやぶさかではないと考えている。選出会議の際に手を挙げたい思いがあるものの、「好きだよねと思われているのでは」と周囲の目が気になるという。結果的に、本年度も会長に就任したが、自ら手を挙げることはなかった。

経験値で差

 同市PTA連合会は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度、市内小中学校の保護者や当時のPTA会長、校長を対象にPTAの現状を知り、今後を考えるためのアンケートを行った。

 インターネット上で行ったアンケートに、保護者からは約4千件の回答が寄せられ、会長、校長の回答率は95%前後になった。

 保護者向けのアンケートでは、PTA活動に対する意識として①やりたい人やできる人がやるボランティア(33.7%)②その学校に子どもを通わせる保護者の務め(30.1%)③親として誰もが関わる子育ての一環(36.2%)―と、選択肢への回答に大きな差は出なかった。

 だが、3年以上の役員経験者と役員経験のない保護者を抽出すると、それぞれ最も多くて経験者の約5割が③と答え、未経験者の4割近くが①と答えるなど、経験値によって差が現れた。

 PTAに望むことに関する設問(複数回答可)では「時代に合った組織や活動の見直し」が76.6%と圧倒的に高く、「子どもを取り巻く現状課題(いじめ、不登校、非行、虐待、貧困等)への取り組み」(27.1%)、「仕事の公平な負担」(25.9%)、「任意加入・任意参加の徹底」(24.8%)と続いた。保護者の多くが、旧態依然とした活動に違和感を感じていることが分かる。

 PTA会長を対象に本部役員候補者の選出方法を尋ねた設問では、小学校と中学校で違いが現れた。

 小学校は「自薦(立候補)が多い」が30.3%と最も高く、「役員選びのアンケートの回答」が28.5%で続いた。一方、中学校は「くじ引きやじゃんけんが多い」(34.7%)がトップ。「本部役員による勧誘(一本釣り)が多い」と「地区ごとの選出による(地区代表)」が30.4%で並んだ。

 各学校のPTAで何らかの課題や問題を抱えていると感じるかを尋ねると、小中学校のPTAとも6割前後が「感じる」と回答。理由には、「児童数の減少による役員の人手不足」「PTA事業参加に対する負担感」「ノウハウの蓄積」などが挙がった。

 運営に関する自由記述では、「マイナスイメージを払拭(ふっしょく)させたい」「保護者の負担を減らす運営を心掛けたい」といった意見が散見された。活動を通してPTAの必要性を認識しており、保護者の理解を得るためにいかに尽力しているかが見て取れた。

「PTO」に変更 ボランティア色濃く

 親(ペアレント)、教員(ティーチャー)が連携する組織(アソシエーション)のPTAを巡り、新たな動きが出ている。

 「3本の『や』がなくなればPTAはハッピー」。そんなスローガンの下、東京都大田区の嶺町小PTAは「PTO」に改変した。ボランティア色を濃くして2014年度から運営。「O」はより広い意味での組織を指す「オーガニゼーション」の頭文字で、同時に「応援団」を意味する。

 モットーは「楽しむ学校応援団」。会長ではなく団長、副会長ではなく副団長とし、役員会はボランティアセンター(ボラセン)と名称変更した。

 (1)やらないといけない義務感(2)やらされている強制感(3)(自分はしているのに)やらない人がいる不公平感―が3本の「や」。義務感なく、魅力的な活動をしたい人が楽しく取り組めることが根底にある。

 専門委員会の枠にとらわれず、絶対に外せないと考える登下校時の見守りなど「子どもの安全に関わる活動」と、「地域との関わり」は継続。その他は状況を随時見直して活動している。

 実際、PTA時代に廃止したベルマーク活動が、PTOになった後、保護者からの希望で復活した。昨年度まで2年間、団長を務め、本年度は副団長の昼馬みすずさん(43)=下仁田町出身=は「やりたい人がやることこそボランティア。こうしたことが自然発生的に出てくることがPTOの良さ」と言う。やりたい人がいなければ、次年度はやらなくてもいいというスタンスだ。

 活動のたびに児童を介して知らせ、サポーター(会員)を募集。メリットがあると応募が増えるため、例えば運動会では、自分の子どもが出場する競技は特等席で応援できるようにサポーター席を設けるなどしている。

 ボラセンメンバーを募る際に気を付けていることが一つだけある。それは苦手なことや無理を強いることはしないこと。パソコンが苦手な人にパソコン業務をさせるのは苦行でしかない。昼馬さんは「得意なことは何なのか、生活スタイルに合った活動は何なのか、話し合っている」と言う。家庭や仕事の事情で関われなくなった場合も「気にしないでと声掛けできる関係が構築できている」。

 本年度の団長の星義克さん(46)は、保護者は学校と関わりたい、子どもの様子を知りたいという思いがあるとし、「そのためにできることはしたいという保護者はいる。その気持ちがうまく実現できる仕組みづくりが大事」と語った。

アンケートで問題を顕在化

 高崎市PTA連合会のアンケートは、2019年度の市P連研究大会に活用するために実施した。実行委員長を務めたのが、同市の司法書士、泉純平さん(46)だ。

 PTAは閉鎖的な部分が多く、他校がどういう状況なのかも分からない。どのような問題を抱えているのかも明らかになっていない。「高崎のPTAでは今、どのような問題が起きているのか、情報共有しよう」と考えたのが、アンケートのきっかけだった。

 結果を見て、「都会だけのことだと思っていたが、地方都市でも同じ問題を抱えていたことが分かった」と泉さんは振り返る。

 「じゃんけんやくじ引きによる役員決めの廃止」「活動の簡素化」「逃げ勝ちする人への対策」「任意団体であることの周知」―。

 自由記述欄には、それぞれ保護者からの要望がぎっしりと書かれていた。水面下ではびこっていたPTA問題が顕在化した。

 「PTAを壊すことになるのではないか」という懸念を抱く人もいた。だが、「一部そういった動きに火を付けた可能性もある」とした上で、「PTAを良い方向に変えるには、誰かがいずれやるべきことだったとは思う」と自負する。

 研究大会のテーマは「時代は令和へ~○○(まるまる)から考えるこれからのPTA」。○○を「零(れい)」の「和」と読ませ、「令和」と掛けた。「ゼロ」が二つ、または横に並べると∞(無限大)にも見えることから、「ゼロベースから考えることで、可能性は無限大」との思いを込めた。

 泉さんは本年度、高崎佐野中のPTA会長を務める。保護者が活動しやすく「入って良かった」と思えるPTAにするため、これまで「慣例」として行ってきたことを含め、組織運営を見直している。会長でいる間に感じた課題は何とか解決させ、次の代に引き継ぎたいと考えている。

 組織を変えようと、強い思いを持っているPTAは少なからずある。泉さんは司法書士という専門家の視点として「何かを変える際は、会則の改正など適正なプロセスを通らないと、トラブルの元」とアドバイスした。

オンラインに活路 安全情報や行事 動画配信

 新型コロナウイルス感染拡大により、2020年度は年度初めから軒並み学校行事が中止になった。PTA活動も制限される状況が続いた。運営方針の検討を余儀なくされる中、動画配信に力を入れたり、会議をオンラインに切り替えたりする動きが活発化。PTA役員らは「学校の様子を保護者に伝えたい」「今でなくてはできないことをしたい」との思いを強くする。

■「形変えて継続」
 昨年12月中旬、高崎市文化会館で開かれた同市PTA連合会の研究大会。今回は会場とオンライン配信による“ハイブリッド開催”を試みた。「この2年で子どもを取り巻く環境や学校現場、PTA活動は大きく変わった。時代に合った在り方を検討することが求められる」。山崎吉郎会長はあいさつした。


 各PTAの会議などでも、リモート参加が可能になってきた。山崎会長は「コロナを機にPTA不要論が再燃している。なくすのは簡単だが、こういう時代だからこそ人とのつながりが必要であり、形を変えて継続するべきだ」と主張する。


 同月上旬に開かれた県PTA連合会の大会もオンラインで実施。事務局は、各校の状況も踏まえ「新しい生活様式の中で工夫し、良さも見いだしている。(将来的に)コロナが収束したからといって、ゼロに戻す(オンライン会議などをなくす)必要はない」とした。
 伊勢崎あずま中PTAは保護者や生徒に向け、積極的に動画を配信している。2020年9月、同校生徒が交通事故で亡くなったことがきっかけだった。


 新型コロナの感染拡大に伴い、同年3月に公立の小中学校と高校が一斉休校。行事も軒並み中止され、同校は恒例の交通安全教室ができなかった。同年夏にPTAが実施したアンケートで、保護者や地域住民から「危険」と指摘のあった箇所を改善することもなかった。そうした時に起きた事故だった。


 「情報をつかんでいたのに…」と悔いた当時の会長、市東剛さん(62)は、危険箇所を落とし込んだ地図を作製し、近隣の小学校PTAと連携して旗振りを強化。同時に、自転車の安全な乗り方を啓発する動画を作成した。


 なぜ自転車は左側通行なのか、カーブミラーにはどう映っているのか―。あらゆる状況に分けて撮影・編集し、動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップした。市東さんは「自転車は加害者にもなり得る。しっかりと教えないと」と動画制作への思いを語った。

■全競技撮影


 他の行事でも動画配信は役立った。体育祭は2年連続で保護者の見学が制限された。そのため、校庭や校舎屋上などに設置した4台のカメラを使い、役員が全競技を撮影。1本の動画に編集した。「その場にいるよりもずっと見応えのある動画になった」と市東さんは自負する。


 「コロナ禍だからこそ、子どもたちの前に」と、松本明良校長のビデオメッセージをたびたび配信。役員会議などもオンラインを活用した。新型コロナの感染拡大はPTA活動を見直すいい機会になった。「どうせやるなら自分たちが楽しもうという思いで活動できている」と、本年度会長の金子治さん(45)は話す。


 これらの活動が認められ、本年度の優良PTA文部科学大臣表彰を受けた。


 下仁田中PTAは昨年9月、主催する講演会をビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って配信。学校の許可を得て、生徒に1人1台配布されているタブレット端末で視聴した。講演後は学年懇談会を開催、ズーム越しに教諭とも意見交換できたという。


 県内でもいち早く端末が導入され、5年前から活用してきたことが生きたという。黒沢ひとみ会長は「小規模な学校だからこその強みかもしれない」と話した。

■PTA支援「さかせる」 業務の外注先サイトで紹介


 コロナ下で運営の在り方を見直すPTAが増える中、昨年11月、活動をサポートするウェブサイト「PTA’S(ピータス)」が立ち上がった。「PTA業務」の外注に関する啓発と促進、活動への不安や疑問を解決するための情報提供などに取り組む。


 運営する「合同会社さかせる」(川崎市)の増島佐和子代表(50)は昨年度までの2年間、小学校のPTA役員を務めた。所属するPTAに理不尽なことはなかったが、他校も含め、周囲からは運営における不平不満が聞こえてきた。一定の質を担保しながら、楽しく安定したPTA運営をするためには、外注が一つの手だてになると考えた。「餅は餅屋。プロに任せた方がスムーズなこともある。保護者は保護者にしかできないことに集中してほしい」


 サイトには外注候補先として、増島代表が面談し、条件を満たした企業を警備や清掃、印刷など12業種に分けて掲載。関心を持てば、PTAと企業が直接やりとりできる。弁護士や税理士らと連携し、個人情報の管理や非会員への対応といった運営上の判断に迷う事例を、法的根拠などに基づいて解説。外注ノウハウやコロナ下の行事運営といった、PTAの困り事を解決する研修会などもオンラインで実施している。


 予算は子どもたちのために使ってほしいという思いから、PTA側は登録料や手数料を含め全て無料。現在、全国約300のPTAが登録するほか、未登録のまま研修や相談会に参加するPTAもあり、徐々に広がりを感じている。


 増島代表は「サービスを充実させ、もっと使いやすくなるようブラッシュアップさせたい。PTAにとって選択の幅が広がるサイトにするため、登録企業の増加も目指したい」と話す。詳しい情報をウェブサイト(https://ptas.site)に掲載している。

■要望受け学年委員廃止 


 ICTの活用以外にも、各校PTAでさまざまな試みや改革を進めている。


 沼田升形小(沼田市)PTAは昨年度、活動が制限されたことから、学校側と協議し、学校運営に関する保護者アンケートを実施。全校保護者144人に対し、行事や学校生活、勉強面での困り事などを記述式で回答を求めた。回収率は約8割だった。


 結果を受け、学校側は多かった要望のうち3点を同年度中に改善した。


 まず、熱中症対策として夏場のみ認められていた学校への児童の水筒の持参を、通年で可能にした。2点目は、夏用の学校指定の体操着について。洗い替え用に複数枚必要となり、家計の負担を指摘する声があったため、授業の際は市販の白無地Tシャツの着用を許可した。3点目は、登下校に通年で着用している指定ベレー帽について。いつのころからか慣例になっていたが、(1)夏場は蒸れる(2)防犯上不安―などの意見があったため希望制にした。


 森下和樹校長は「アンケート前は不安もあったが、納得できる意見が多く、すぐにできることは対応した。これを機に、PTAと協力し合える関係を築きたい」と振り返った。


 富岡高田小(富岡市)PTAは本年度、各学年1人ずつ選出していた学年委員を廃止した。保護者らから要望が出ていたこともあり、昨年度に検証、年度末総会で承認された。


 同校のPTA会員は76人。PTAは本部役員のほか、学年、成人、校外補導、保健厚生の各委員で常設委員会を構成していた。そのため毎年度、会員の半数近くが役員や委員のいずれかを務めることに。何年も携わっている人や、きょうだいが在籍するたびに役員に就く保護者もいた。


 学年委員の担当の一つに廃品回収もあった。今月中旬、初めて委員不在で行われたが、教職員や本部役員、各委員によって、ドライブスルー形式での実施は滞りなく終了。保護者の負担軽減につながっている。

《視点》自ら声上げ行動を 

 夫は単身赴任中、保育園に通う子どもの送迎は母に任せきり。そんな生活を送る中で、果たしてPTA活動ができるのだろうか―。遠からず、関わることになる記者にとっても切実な問題である。


 PTA活動において、時代が変わっても形が変わっても、変わらないことがある。それは、「PTAは子どもが充実した学校生活を送るためにサポートする組織」ということ。


 親が不平不満を抱きながら活動をしている姿を子どもが見たら、どう思うだろうか。自分たちの支援に楽しそうに取り組む親の姿を見る方が、当然うれしい。


 ふと、一人の知人の存在が頭に浮かんだ。同業他社のその人は、学校PTAの会長と自治体のPTA連合会長を任期いっぱい務めていた。ある程度、時間に融通の利く仕事とはいえ、同じことができるかと聞かれたら、答えに窮する。だが、その人は言った。「時間はやりくりすれば何でもやれる。楽しいよ」


 「仕事をしていて時間がない」は言い訳でしかないと気付かされた。とはいえ、負担の大きすぎる活動、時代にそぐわない活動、必要性を検討しない前例踏襲の活動は見直す必要があるだろう。


 変えるためには誰かではなく、自分自身が声を上げ、行動していく。誰もが、そんな心意気でPTA活動に臨みたい。