▼嬬恋村出身の芥川賞作家、南木佳士さんの小説には群馬を舞台にしたものが多い。『熊出没注意』もその一つ。夫婦で宿泊した老舗旅館の座卓に置かれた書きつけが作品名になっている

 ▼〈死んだふりをしても助からない。熊は好奇心が強いので、あなたを噛(か)んだり、引っ掻(か)いたりします。熊に攻撃を受け、何の対処する方法がない場合の、最後の手段が「死んだふり」と覚えるべし〉

 ▼今秋は山の恵みの不足でクマの出没情報が増加、襲われる人も相次ぐ。小説には「死んだふり」の仕方が続く。〈窪地があれば窪地に伏せ、頭や首筋、腹部などを腕で保護し、団子虫のように丸くなり、できるだけダメージの少ない体勢で、熊が攻撃をやめ、立ち去るまで耐え抜くしかない〉

 ▼この方法で大丈夫かと夫婦は疑念を抱くが、わが身に置き換えても、「死んだふり」を続けられるか自信はない。攻撃がやむまで体を丸め防御する姿を想像したら、首相官邸の主の姿がだぶった

 ▼「近いうちに信を問う」と明言して2カ月半余り。自民、公明両党からは「早期解散」を要求され、身内の有力閣僚からも年内解散を迫る発言が飛び出し、各紙も世論調査で解散を望む国民の声が強いと伝える

 ▼臨時国会が29日始まる。会期は1カ月程度というが、四面楚歌(そか)のような「解散」攻撃に野田佳彦首相は耐え抜くつもりだろうか。