▼久しぶりに鎌倉に出かけた。訪れたのは北鎌倉の東慶寺。太田市にある満徳寺とともに江戸時代は、離婚を望む女性が駆け込むことができた縁切り寺だった

 ▼ミシュラン発行の旅行ガイドで、東京の高尾山が三つ星を獲得して注目を集めたが、東慶寺も三つ星の評価を得ている。にぎわう鶴岡八幡宮や円覚寺、建長寺とは異なる静かなたたずまい、こけむす境内は別世界の趣だ

 ▼「三くだり半」(離縁状)の研究で知られる前縁切寺満徳寺資料館長、高木侃(ただし)さんは「保守的だった東慶寺、時代に即して歩んだ満徳寺と見ると興味深い」と解説する

 ▼駆け込んでから離婚成立まで「在寺2年」の期間を江戸期を通じて守った東慶寺。当初は「足かけ3年」だった満徳寺は、夫側から離縁状が出れば、その時点で認めると柔軟に変化した

 ▼高木さんの研究の中心は満徳寺だが、40歳のころは東慶寺の宝蔵にこもり離縁状や古文書の調査研究に没頭した。その成果は『縁切寺東慶寺史料』にまとめられている

 ▼両寺に共通するのは「常に女性の幸せを考えていた点」と高木さん。今も毎月、東慶寺に出向き、離縁状と古文書を読む会で講師を務める。ともに花の寺として知られ、四季折々の味わいが楽しめるが、東慶寺の紅葉は「特に穴場」と語る。歴史の重みや新たな魅力を知り、また訪ねてみたくなった。