▼6世紀に造られた前橋市西大室町の前二子古墳(国指定史跡)の石室が初めて調査されたのは1878(明治11)年のこと

 ▼土器や装身具など多量の副葬品が出土した。これが大きな反響を呼び、翌年にかけて行われた出土品展覧会には全国から5千人を超える見学者が訪れた

 ▼意外な人物がここに駆けつけている。幕末・維新の激動期に外交官として活躍し、日本研究にも力を注いだアーネスト・サトウ(1843~1929年)である。80年3月、同古墳の出土品調査に取り組み、さらにサンプルを持ち帰り科学的分析まで行った

 ▼その模様を日記に書き、克明なスケッチを含む調査結果を「上野地方の古墳群」と題して発表している。記述から浮かび上がるのは、日本の文化を深く理解しようとするサトウの誠実な姿勢だ

 ▼サトウの『日本旅行日記』(東洋文庫)を訳した庄田元男さんはこう指摘する。〈飽(あ)くことのない知識欲、(略)異国の事物に対する溢(あふ)れるばかりの感動―これらが渾然(こんぜん)一体となって日記の中に結実していく〉

 ▼古代東国屈指の有力地域だった本県の歴史文化遺産を再認識する事業を県が始めている。78年ぶりの総合的な古墳調査やシンポジウムなどが予定される。歴史の語り部に新しい光を当てるとき必要なのは、サトウが示した〈知識欲〉〈感動〉なのだとあらためて思う。