▼〈この上なく偉大なる才能が、多くの場合、自然に、ときに超自然的に、天の采配によって人々の上にもたらされるものである〉

 ▼イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダビンチの展覧会を都内と高崎市内で見る機会があり、その都度、巨匠より半世紀後に生まれた画家・建築家の筆になる〝万能の天才〟の伝記の一節を思い起こした

 ▼都内であった展覧会が「ほつれ髪の女」を中心に絵画が主体だったのに対し、高崎市美術館で開催中の「もう一つの遺産展」は、多方面にわたって行った研究の手稿や素描、復元模型を展示している

 ▼中でも、人の力に頼らず、バネの力で動く自走車やヘリコプター、垂直飛行機など現代に先駆ける発想には驚嘆するほかなかった。自らの時代にそれが実現しなかったとしても、没後500年になろうとしている現代に生かされているアイデアは数多くある

 ▼ことしは巨匠の生誕560年。2週間ほど前、ローマ発の外電がトリノ王室図書館に収蔵されている60歳ごろの自画像が劣化し、深刻な状態にあることを伝えていた

 ▼歳月の経過による劣化は残念だが、偉業が消えるわけではない。〈鉄が使用せずして錆(さび)、水がくさりまたは寒中に凍るように、才能も用いずしてはそこなわれる〉。ダビンチの言葉は展覧会場を訪れる子どもたちを鼓舞しそうだ。