県内でいち早くバス事業を起こした実業家の岩崎半之助(1893~1972年)は12歳でオートバイに乗り、16歳で車を購入する。ただ運転試験はなく、自動車運転手鑑札が交付されたのは10年後の1918年。本県初の免許証だった

 ▼それから100年余り。県内の免許保有者は139万8461人(昨年末時点)に上る。取得率は全国トップだ。生活の足として欠かせないということだが、100メートルの移動に車を使うとの調査結果もある。生活様式を変えるのは容易でない

 ▼昨年県内で運転免許を自主返納した人は7122人で、前年より1128人減った。返納者のほとんどが65歳以上。高齢ドライバーの重大事故が相次ぎ右肩上がりで増え続けてきたが、一昨年減少に転じた

 ▼原因はコロナ禍である。市町村はバスカードやタクシー利用券の配布など車を運転しない生活を支援している。だが、コロナで交通機関の利用をためらっているらしい

 ▼暮らす場所には鉄道もバスもないという高齢者もいるだろう。自動運転車といった先端技術が身近になるにはもう少し時間がかかりそうだ。買い物に、通院に、車なき生活を誰が支えるのか

 ▼岩崎は免許取得の翌年、自動車をより深く学ぶため米国留学し、帰国後は県民の足の不便さを解消しようとバス会社を設立。一生を車の世界で生きた。高齢化社会の難題を見て、今ならどう動くだろうか。