▼短歌はわずかな心の動きを表現するのに適した文芸だ。新型コロナウイルスの感染拡大で暮らしの足元が揺らぐ中、上毛歌壇にはたくさんの作品が寄せられた
▼〈何時何処で予期せぬ何が起るかを突き付ける如コロナウイルス〉篠原水鈴。中国・武漢で原因不明の肺炎が確認されたのが昨年末。人を介して瞬く間に世界中に広がった
▼店頭からマスクが消え、入手困難になった。〈迫り来るコロナウイルスに
▼疑心暗鬼も広がった。〈咳払いしても振り向く群衆のマスクの仮面に恐れ
▼「3密」を回避する新しい生活様式が日常に。〈二メートル妻と間をおき散歩するいつもの道をつかず離れず〉岡田忠重。人口密度の高い都会ではなく、地方が見直されるようになった
▼街に人の姿が戻りつつある今、ともすれば当時の気持ちを忘れてしまいそうになる。〈手作りのマスク並べてふと思う母縫いくれし戦後の足袋を〉内田久江。不安な中に人々の変わらぬ暮らしがあった。