▼1969年8月15日、米国の片田舎で始まった野外音楽イベント「ウッドストック」の進行は遅れに遅れた。予想をはるかに上回る40万人以上の若者が押しかけて道路は渋滞し、出演者が会場入りできなかった

 ▼17日の日曜夜に閉幕予定だったが、大トリのジミ・ヘンドリックスが登場するのは18日朝のこと。聴衆のほとんどは月曜を前に引き上げ、翌年早世する天才ギタリストの名演を見られたのは一部だった

 ▼社会現象になった理由は時代背景を含めさまざまに分析されるが、飲食や宿泊も伴い音楽を楽しむ「フェス」の原点として語られてきたのは間違いない。伝説を追うように開催は世界で増え、今や若者だけでなく家族連れでにぎわう。が、規模の大きさ故にコロナの直撃を受けた

 ▼「山人音楽祭」(9月、前橋市)や「FINAL GBGB2020」(5月、高崎市)をはじめ全国で中止・延期された。肩を落とした人は多いだろう

 ▼『ロックフェスの社会学』(ミネルヴァ書房)によると、フェスとは〈現代社会における祝祭〉だという。個人化が進む中、特別な体験を大勢と共有する数少ない場である

 ▼数万人が集う現代の祝祭を取り戻せるのはいつか。今は米アカデミー賞を受賞したウッドストックの記録映画で、フェスが生む熱狂の原点を追体験しながら復活を待つ楽しみ方もある。