私がワーキングホリデー(以下、ワーホリ)でオーストラリアを訪れた時、そこで出会った欧州から来た人のほとんどは20歳前後の若者だった。しかし、日本人は30歳手前の人たちばかり。なぜかというと、ワーホリの年齢制限が30歳のため、多くの日本人はギリギリになって行く決心をつけ、仕事を辞めて渡豪するからだ。ちなみにそういう彼らのことを「ギリホリ」と呼ぶ。

 一方、欧州から来た人が若いのには理由がある。それは欧州にあって、日本にはない制度「ギャップイヤー」だ。

 国によって多少違うが、高校を卒業して大学に入る前に1年間好きなことができる猶予期間のことである。その期間にNPOでボランティアをするのもよし、企業でインターンをするのもよし、アルバイトをして貯金するのもよし、世界を旅行するのもよし、もちろんそのまま進学するのもよし。

 ただし多くがギャップイヤーを取るそうだ。なぜなら、その期間は自分のやりたいことや学びたいことを見つけるのに役立つからだ。そして1年間で見つからなかったら、期間を延長できたり、中には大学がギャップイヤーを推奨してお金を出してくれたりするところもあるという。だからワーホリで出会った欧州の人たちは若い人が多かったのだ。

 私は大学を卒業して、就職せずに自らギャップイヤーもどきを取り、オーストラリアに渡った。世界中から集まった若者とファームで働いたり、キャンピングカーを借りて旅行したり、広大な大陸を1人で自転車で縦断したりした。1年の間にたくさんの人に出会い、たくさんの生き方を知り、幸運なことに自分が人生をかけてやりたいことを見つけることができた。それでも、欧州の人たちと同じようにもっと早くこのような経験ができれば良かったな、とも思った。

 なぜかというと、学校という狭い世界しか知らず、自分が本当は何をしたいのか、何を学びたいのか分からないまま大学に進学したからだ。その上、できるだけ有名な大学に入ることが求められたし、自らもそれを求めていた。勉強できる人が偉く、“良い”大学に行った人が人生の勝ち組となり、幸せになれると思わされていたのだ。もし日本にギャップイヤーがあったなら、人生はそんな単純なものではなく、幸せになる方法は一つではないと早い段階で気付くことができたのではないかと思う。

 最近、思い詰めたり、人生を悲観したりして凶行に走ってしまったかのような事件が多発している。今の子どもたちだけでなく、誰の人生にもギャップイヤーのような期間が必要ではないだろうか。このせわしない日本社会に、立ち止まり、深呼吸して周りを見渡す時間が。

 【略歴】大学卒業後に世界を飛び回る中で、通り掛かりの人と抱擁する「フリーハグ」を開始。約1万人とつながってきた。企業や教育機関で講演も行っている。

2022/2/3掲載