▼体の不調を治す「ドクターラムネキット」10円、きょうだいの順番を入れ替える「兄弟だんご」10円。『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(偕成社)で売られているのは奇妙な駄菓子だ。食べた人の願いをかなえ、時に運命を翻弄(ほんろう)する

 ▼「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」で1位になったと本紙にあった。意外な展開や人の欲深さを描いた物語は大人も楽しめる。なにより、おもちゃ箱のようにキラキラと見えた駄菓子屋の風景がよみがえるようだ

 ▼かつては小学校の近くや通学路に必ず店があった。ゼリー、ふ菓子、酢イカなど10円単位の品をどう組み合わせれば少ない小遣いで満足できるか。世代ごとに定番や値段は違うが、宿題より頭を使ったという人は多いだろう

 ▼筆者の駄菓子屋デビューは小学校に入学した1979年。同じ年登場したのが棒状のスナック菓子「うまい棒」だった。1本10円。複数の味が楽しめ、子どもには不動のエースだった

 ▼40年以上愛されてきた定番のおやつが、4月出荷分から初めて値上げされる。主原料の米国産トウモロコシや植物油脂の価格が上がっているためだ。それでも12円と安い

 ▼食品の値上げが相次ぐなか、ネット上には価格を据え置いてきたことへの感謝や食べて応援したいと前向きな声が多い。久々に駄菓子屋という異空間に出向きたくなった。夢だった大人買いをして、童心にも帰れる。