妊娠・出産・育児は、女性とその家族にとって人生における転換期となります。これを境に新たな役割を担うからです。妊娠出産は男性が代わることはできませんが、育児は2人で、そして家族らに協力してもらうことができます。母親だからと1人で頑張りすぎて、自らを追い詰めないでほしいと思います。周囲もお手伝いの声掛けを待っているはずです。

 出産期に里帰りをする産婦が多い半面、実家に帰らず母親らに手伝いに来てもらう方も増えています。里帰りしても両親が働いているため日中は1人で過ごすことが多かったり、夜間の手伝いを気兼ねしてしまったり、上の子が保育所に通っていることなどが理由のようです。コロナ禍で里帰りに慎重になっている方もいます。夫の育児参加が増えていることもあるかもしれません。

 子育て支援に「産後ケア」という公的制度があることをご存じでしょうか? 2019年の改正母子保健法により、市町村は出産後1年未満の女性と乳児を対象に産後ケア事業の実施が努力義務となりました。対象者も「ハイリスク産婦」から「産後心身の不調または育児不安がある者」に基準が変わりました。

 内容は、母親の身体的回復のための支援、授乳指導と乳房のケア、母親の心理的支援、新生児・乳児の状況に応じた育児指導などです。病院や助産所などに宿泊する「短期入所型」、日中に施設で行う「通所型」、「居宅訪問型」の3形態があります。

 産後のお母さんたちの様子を聞くと、「母乳やミルクを飲んでくれれば3時間くらいは休めると思っていた」「抱っこしていないと寝てくれない」「どうして泣いているのか分からない」「気が付いたら自分はご飯を食べていなかった」など、睡眠不足や疲労感などを訴える声が上がります。産後ケアを利用することで疲れを癒やし、リフレッシュして育児をしていただきたいと考えます。

 県助産師会が前橋市に「すずの音助産院」を開設して1年がたちました。主に産後ケア通所型の受け入れを行い、7市町村の母子に対応しています。「静かな環境でゆっくり休めた」「話を聞いてもらい、的確に助言してもらえた」「リフレッシュできた」などの感想をいただき、再び利用してくれる方もいます。

 居宅訪問型の産後ケアは、県内8市町村で当会会員である開業助産師が訪問し、育児相談や指導、乳房ケアなどを行っています。お住まいが前橋市近郊以外の方はこちらの利用をお勧めします。

 私たち助産師は地域から母子とその家族を支援しています。新年度に向けて契約市町村数は増えています。多くの方がこの制度を利用し、専門職の支援を受けながら安心して子育てができるよう願っています。

 【略歴】助産師として35年活動。1996年、伊勢崎市内に出張型の助産院を開業。2020年8月から現職。群馬大医療技術短期大学部専攻科助産学特別専攻修了。

2022/2/22掲載