▼上信電鉄の根小屋駅には利用客に愛されている駅猫がいる。近所で飼われており、気が向くと駅舎でまどろんでいる。姿がないと駅舎はどこか寂しい

 ▼東京・麹町周辺に「猫ヲ探ス」というチラシが配られたのは1957年4月のこと。〈雄猫。毛並は薄赤の虎ブチに白毛多し。「ノラや」と呼べばすぐ返事をする。お心當りの方は何卒(なにとぞ)おしらせを乞ふ〉。依頼主は作家・内田百閒(ひゃっけん)である

 ▼猫に興味はなかったが、庭にいた子猫が水がめに落ちてしまった。猫は水を嫌う。お見舞いとして食べ物を与えたのをきっかけに懐かれた。野良猫だから名前は「ノラ」。やがてかけがえのない存在になった

 ▼繁殖期を迎えると外へ出たがり、出掛けたまま戻らなかった。待てど暮らせど帰って来ない。心配しては涙があふれ、仕事が手に付かない。てんまつを記した『ノラや』は“猫文学”の最高峰とも言われる

 ▼一般社団法人ペットフード協会によると、飼育数は2014年に初めて犬を上回った。21年の推計飼育数は894万匹。コロナ下、癒やしを求めて飼育数が増えている

 ▼ニャンニャンニャンの語呂合わせできょうは「猫の日」。しかも2022年は「2」が六つ並ぶ特別な日だという。〈ノラやノラや、お前はもう帰つて来ないのか〉。百閒は寂しさを紛らわすようにクルツという猫を飼った。だがノラへの思いは消えず、思い出しては涙を流した。