化学メーカーのクラレによる2021年版新小学1年生の「将来就きたい職業」調査によると、「研究者」は男の子で6位に入った。しかし、女の子では16位と低く、大きく水をあけられている。

 内閣府が出す『男女共同参画白書』には毎年、研究者に占める女性割合の推移が掲載されている。昨年は16.9%(ちなみに群馬大は21.9%)。今から30年前の1992年は7.9%で、現在の半分以下だ。白書のデータによると、日本の比率は国際的に見ても最低レベルである。背景に、女性が研究者を目指す長くて厳しい道のりがある。

 日本で初めて博士号を取った女性は香川県出身の保井コノ。東京帝国大学で27(昭和2)年、女性初の理学博士を取得した。47歳だった。当時の社会は「女子が科学をやっても、ものになるまい」という偏見に満ちていた。その道に進むのなら、結婚もせず生涯研究を続けるという暗黙の制約もあったという。彼女は後進のためにお茶の水女子大学の設立に尽力し、生涯発表した論文数は98編に及んだ。

 現在、研究者になるには学士課程で4年、大学院博士前期課程2年、博士後期課程3年、最低でも9年間大学に通う必要がある。キャリアパスとしては医師と同様に厳しい。博士号を取得してもすぐに研究者になれるわけではなく、その後もポストドクターや非常勤講師などで仕事をつなぎ、研究者への道を模索する。中には志半ばで諦める人もいる。やっと大学の職を見つけたとしても、その多くは3年ないし5年の不安定な任期付きからのスタートとなる。

 長い道のりの中では、ライフイベントをどう乗り越えるかという課題がある。20代後半から30代半ばで職を得たとしても、その後、結婚するかしないか、するとしたらどのタイミングで決断するか、パートナーとは離れて暮らすのか、子どもを産むか産まないか…。男女共通のライフイベントでも、その後の研究と生活の両立のために悩みが付きまとうのは圧倒的に女性が多い。

 この十数年で、ようやく日本の大学でも研究者のライフイベント支援に取り組むようになった。本学でもダイバーシティ推進センターがその役割を担い、専門の両立支援アドバイザーが相談に応じてくれている。これは福利厚生のためだけでなく、研究者の裾野を広げ、世界における日本の研究力を高めていくためである。学問の発展のためには多様な視点が欠かせない。その一端を担い、期待される存在が女性なのだ。

 保井コノの抑圧的な時代から、今は女性が自分の好きなことを追求できる時代に変わりつつある。研究者たちは世界につながりながら、科学に向き合い、新たな発見を楽しんでいる。近い将来、女の子の就きたい職業の上位に入ることを期待したい。

 【略歴】岡山県の養護学校や岡山市男女共同参画相談支援センター、香川大特任教授を経て2014年から群馬大講師。デートDV防止全国ネットワーク理事。東京都出身。

2022/3/3掲載