▼趣味やスポーツ、起業など新たなことに挑戦するのに遅すぎるということはない。いわゆる「六十の手習い」が人の心を動かすこともある。アマチュア写真家として知られる増山たづ子さんが、ダムに沈むふるさと岐阜県旧徳山村(現揖斐川町)の写真を撮り始めたのは還暦を過ぎてからだった

 ▼「カメラばあちゃん」として親しまれ、2006年に88歳で亡くなるまでに10万カット以上を残した。美しい自然や住民の笑顔を写した作品は愛情にあふれ、見る人を温かな気持ちにさせる

 ▼高崎市の福田登美恵さん(85)と近藤昌子さん(84)が絵手紙を習い、講師になったのも60歳を過ぎてから。2人は教室を開いて精力的に仲間を増やし、県内各地に絵手紙の種をまいた

 ▼近藤さんが生まれ育った富岡市は20年ほど前、2人によって絵手紙文化が花開いた。教室で学んだ井上かず子さん(72)が中心となって上信電鉄の車内に作品を飾る活動を10年以上続けている

 ▼「絵手紙の街」として売り出そうと、市観光協会は公募展を企画した。全国から集まった1200点以上の作品が世界文化遺産の富岡製糸場をはじめ、周辺の40店舗で展示されている

 ▼きょうは啓蟄(けいちつ)。土の中で冬ごもりしていた虫たちが穴から出てくる頃とされる。富岡市内を散策し、春の風を感じてみてはどうだろう。素朴な絵手紙の中にあなたに向けたメッセージがあるかもしれない。

 

ますやま・たづこ こんどう・まさこ ふくだ・とみえ