親による虐待など、子どもが巻き込まれる痛ましい事件が後を絶ちません。学校や福祉関係をはじめ、子どもに関わる多くの機関や大人たちが、子どもの命や生活を守ろうと知恵を絞り、対策を練って奮闘しているはずです。子どもの命を守り育てる取り組みを考える上で欠かせない視点となり、土台となるものに、児童憲章と国連子どもの権利条約があります。

 児童憲章は、憲法や児童福祉法の精神を踏まえて子どもも基本的人権を持っていることを示し、安心安全な環境を提供して全ての子どもの健やかな成長を保障していくことをうたっています。全文は子ども観と子育ての基本的理念が示された社会的指標です。子どもたちを尊重し大切に育てようと、国民の意識を啓発するために作られましたが、あまり知られていないのが現実です。

 しかし、子育てに大切な児童憲章は母子健康手帳に掲載され、各家庭に届けられています。わが子の成長チェックや予防接種のページを見る人は多いですが、児童憲章をじっくり読んでいる方は少ないかもしれません。これを機にぜひ読んで子どもを尊重する子育てに役立ててほしいと思います。

 国連子どもの権利条約は、国際的に子どもの基本的人権を保障するために定められた条約です。子どもを保護の対象から一人の人間として認め、自己決定を含めた権利の主体と考えている点が画期的な位置付けです。子どもが持つ権利は大きく分け、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利があります。

 条約実現には四つの原則があり、①命を守られ成長できること②差別の禁止③子どもの最善の利益(子どもに関する決定は、その子どもにとって最もよいことを第一に考える)④子どもの意見の尊重(子どもは自分に関係のある事柄に意見を表明でき、大人はそれを考慮する)―が掲げられています。ユニセフも子どもの声を代弁する国際機関として、子どもの権利の実現のために尽力しています。

 しかし日本では、子どもに関する施策や取り組みを決める際にも子ども自身の意見や思いが問われることが少なく、子どもは大人の決定に従っていればいいという傾向が強いように感じます。皆さんも子ども時代に、自分に関することで「こうしてほしい」「これは変だ」と思っても、聴いてもらえず残念な思いをしたことがあるのではないでしょうか。

 私たちの居場所づくりの活動も子どもの権利条約の視点に照らすと、大人の考えで計画することが多く、子どもの声を聴いて共に考える体制の弱さを感じます。大人たちが子どもの権利について学び、子どもの声を聴いて考えをアップデートし、社会全体で問題を認識することが、課題解決の糸口になると考えます。

 【略歴】玉村町を中心に35年間、小中学校教員を務めた。2020年、同町を拠点に子ども支援団体「JOYクラブ」を設立。群馬子どもの権利委員会副代表。群馬大卒。

2022/3/16掲載