カラスによる被害を減らそうと、各地で捕獲が行われている。当然、捕獲した分だけ減るので効果があるように思える。しかし、捕獲は本当に有効な対策なのだろうか? それを語るには、繁殖力と年間を通した個体数変動に注目する必要がある。

 カラスは、春に1組のペアが3~5個の卵を産む。その後、捕食されたり、餌を十分に食べられなかったり、さまざまな理由でひなは死に、2.5羽程度が巣立つ。繁殖活動をしない個体を考慮しても、ひなが巣立った夏に個体数は約2倍になると考えられる。このまま翌春を迎えれば数は年々倍々で膨れ上がり、数年後には全国津々浦々カラスだらけになるはずだ。

 しかし、実際の個体数は年ごとに多少の変動があるにせよ、大きな変化はない。それはなぜか? 既にカラスの数は飽和状態にあり、ある要因で毎年春には元に近い数に戻ると考えられる。その要因とは冬の餌の減少であり、多くが冬に餓死しているのだ。

 分かりやすく、仮の数字を使って説明してみる。春のA市のカラスの総数を1万羽とする。ひなが巣立つと2万羽に増え、餌が豊富な夏から秋まではその数を維持する。餌の乏しい冬になると多くが餓死し、翌年の春には再び1万羽に戻る。

 ここで捕獲の実態に触れよう。カラスの捕獲は箱わなと呼ばれる小屋のように大きなわなで行われることが多い。天井の一部が開放され、太い針金がぶら下がっている。入ることはできても、出ようとすると翼が針金に引っかかり、出られないという構造だ。中には誘引のための餌を置き、警戒心を和らげるため、おとりのカラスを入れる。

 ところが、カラスにするとこのわなは実に怪しく見えるようで、捕獲されたのは経験の少ない幼鳥がほとんどだ。まれに成鳥も捕まるが、弱った個体が多い。つまり、よほど食うに困った個体ばかりが捕獲されているのだ。このような個体は放っておいても冬を生き延びられず餓死する。要は、冬に餓死する個体を前もって捕獲しているだけだ。

 もちろん、夏から冬の間の個体数は一時的とはいえ減るため、全く意味がないわけではない。しかし、わなの設置や維持、餌の管理やおとりの世話など、捕獲にはコストがかかる。また、前述の数字でいうと、夏や秋に1万1千羽捕獲して、ようやく翌春に1割が減る計算だ。費用対効果はとても低い。そして、一時的に減っても、生き延びる数は冬の餌の量に依存するため、捕獲を止めれば翌年には元通りになってしまう。

 そこで、「野生動物への無自覚な餌付けストップキャンペーン」を改めて推奨したい。ヒトの生活に由来する餌資源を減らし、カラスの個体数削減につなげるという施策だ。成果が出るまで時間はかかるが、確実な方法である。

 【略歴】鳴き声でカラスの行動を制御する製品などを提供するCrowLabを設立。ふん害や食害といった対策を全国で手掛ける。宇都宮大特任助教。桐生市出身。

2022/3/17掲載