▼船の操縦で最も気を使うのは離岸と着岸だという。ブレーキがないから急に止まれない。かじを切っても車のようにすぐに曲がってくれない。刻々と変化する水や風の動きを読み、船長の経験や勘も必要になる

 ▼有人でも難しい操船を無人でこなす実証実験が、八ツ場ダムの「八ツ場あがつま湖」で行われた。湖面観光で利用される水陸両用バス「八ツ場にゃがてん号」に自動運航システムを搭載し、入着水を含め2キロの航路を無人で動かした。水陸両用車が陸と水上で連続した自動運転に成功したのは世界初という

 ▼実験は日本財団の無人運航船プロジェクトに採択され、IT企業や、バスを保有する長野原町、車の自動運転技術を開発する埼玉工業大など5社・団体が実施した

 ▼町には、実験を知った人から「自動運転はいつから始まるの?」と問い合わせが寄せられるという。しかし、水陸両用車の自動運転が次の段階へと進んだ時の舞台は八ツ場ではない

 ▼実験の目的は、観光利用が主流となっている水陸両用車の自動運転技術を開発し、災害時の技術転用や離島への物流インフラの構築などにつなげることだ

 ▼「にゃがてん号」はこれまでと変わらず、人が動かす。世界初の自動運転を体験できないのは残念な気もするが、内陸の湖で培われた技術が離島や海辺の暮らしを豊かにするために生かされる。感慨深く、誇らしくもある。