あなたには自宅でも職場でも学校でもない、居心地の良い居場所はあるだろうか。近年、このような場所の需要が高まっており、これを「サードプレイス」と呼んでいる。

 サードプレイスは、米国の社会学者、レイ・オルデンバーグ氏が提唱したもので、職場や学校など義務的に訪れる場所ではなく、「自らの意志で訪れる場所」と定められている。私は「前橋市高校生学習室」(同市表町)が、高校生にとってのサードプレイスになっているのではないかと考える。

 学習室には自主学習をするスペースのほかに、交流やミーティング、セミナーなどのイベントを行えるスペースがある。自由に使える参考書が置かれているほか、ボランティア情報や進路情報、市内情報など、高校生に必要とされる情報の掲示、発信も行っている。近い世代の交流を促したり、自分の将来について考えたりするイベントも定期的に開いている。

 現在、1500人を超える高校生が利用登録しており、昨年5月の開室から今年2月末までに、延べ約1万7千人が利用した。

 ここでは学校や学年の垣根を超えた交流が生まれており、その交流が新たな価値を創造する活動へとつながっている。新型コロナウイルス感染症の流行によって文化祭が開催できなかった高校生に発表の機会をつくる取り組みや、性的少数者への理解を深めるための映画製作、コミュニティーづくりを行うNPO法人の立ち上げなど、生徒が主体となったプロジェクトがいくつも動き始めている。

 これまで支援を受ける側だった利用者が高校を卒業し、今度は支援する側に回る動きも見られている。既に、3人の卒業生が運営団体に加わろうとしているほか、10人を超える卒業生が後輩たちのために支援活動をしたいと手を挙げている。

 学習室は官民が連携して運営しているため、高校生からの意見や提案が市政に反映しやすくなったり、行政情報の届きにくかった高校生にダイレクトに情報発信できたり、連携することの効果や良さも強く感じている。

 大人向けのサードプレイスが増加している中、高校生をはじめとした若者向けのサードプレイスはまだ少ないのが現状だろう。サードプレイスは新たな交流を生むだけでなく、地域価値を創造する場所にもなっている。また、行政と民間が連携してサードプレイスを運営することによって、それぞれの手の届かないところを補い合うことも期待できる。

 若者向けのサードプレイスを増やすことは、地域に新しい価値を創造する若者を増やすことにつながる。衰退しつつある地方を活性化していくためには、若者の居場所をどのようにつくっていくかが鍵になると考える。

 【略歴】高崎高3年だった2016年11月に同NPO法人を設立し、若者の地域定着に取り組む。21年5月から前橋市が開設した「高校生学習室」室長。慶応大3年。