八ツ場観光の目玉として1月に運航を開始した観光船。乗客が少ない日も多く、冬でもにぎわう草津温泉からの呼び込みが課題となっている

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)が完成し、2年を迎える。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けつつも、年間20万人超が訪れ、県内を代表する観光地に生まれ変わった。周辺に観光スポットが増えた一方、八ツ場エリアを周遊する仕掛けや、草津温泉など近隣の観光地と合わせた売り込み面で課題も抱える。

■施設同士や草津周遊連携に課題

 2020年3月末に完成したダムは、地元の反対運動や国による建設工事の一時中断などの紆余曲折うよきょくせつを経て計画から68年かかり、「八ツ場」は全国区の地名になった。萩原睦男町長は「八ツ場ダム問題から八ツ場ダムブランドにする」と強調し、水陸両用バスで世界初の無人運転技術の実証実験の舞台とするなど話題を作ってきた。コロナ下で完成式典は2年間できなかったが、町は5月にも完成記念イベントを開く予定だ。

 道の駅八ツ場ふるさと館、長野原・草津・六合ステーション、川原湯温泉あそびの基地NOA(ノア)、やんば茶屋、八ツ場湖の駅丸岩、やんば天明泥流ミュージアム。ダム完成と前後して、水没地区にはさまざまな観光施設が誕生し、ハード面は整った。

 ただ、各施設の入り込み客数は差が大きい。道の駅は年間100万人が訪れるのに対し、1万人程度にとどまる施設もある。国土交通省利根川ダム統合管理事務所によると、ダム完成後の2年間、ダム本体には毎年20万人超が訪れた。コロナ下で見学できない期間はあったが「ダム人気」は衰えていない。

 見えてきたのは、各施設が一体となった誘客が進んでいないという課題だ。「各地に施設はできたが、行政から丸投げ状態になっている」―。地元からはこんな不満の声も上がる。

 完成ブーム後の観光地として定着させるには、ソフト事業が必要な段階に入った。水没地区の住民を中心とした民間主導の実行委員会は毎年8月8日を「八ツ場の日」に定め、昨年初めてスタンプラリーを実施したが、観光客を周遊させる催しはまだ少ない。湖畔を巡る公共交通がなく、駅を降りて徒歩でダムを見学するのは難しいのが実情だ。

 地元住民らでつくる八ツ場ダム水没関係5地区連合対策委員会(20年解散)で長年活動してきた桜井芳樹元委員長は「旅行会社との提携などで宣伝したり、観光客が大勢来る草津町と一緒に取り組むために行政同士が手を結んだりする観光対策が必要だ」と話す。

 町の観光を調査した跡見学園女子大観光コミュニティ学部の篠原靖准教授は「八ツ場エリアが一つのテーマパークとなるようなグランドデザイン(全体構想)を作って民間の力を回していけるかが大事になる」と指摘する。

■群馬県内、コロナ下の観光客 長野原 ダム貢献 唯一増

 県内観光は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けている。県によると、2020年の県内の観光入り込み客数は感染拡大前の19年と比べ39.1%減の4021万6000人だった。

 市町村別では長野原町が同10.4%増の118万5000人と、県内で唯一増加。20年に完成した八ツ場ダムが誘客に貢献したとみられる。

 主要観光地では、草津温泉(草津町)で28.6%減少したものの、234万4000人と県内で最多。隣接する長野原町は、地の利を生かして草津の観光客を呼び込めば、さらに客数を伸ばすことができそうだ。