緑の羽が桃色の花びらをついばみ、青い空へ溶けていった。「メジロとカワヅザクラ。あれを目当てに皆さん来る。結構、辛抱強く待ってますよ」自身も撮りに来た遠藤博之さん(65)=太田市新田木崎町=が教えてくれた。

いせさき市民のもり公園(伊勢崎市)は今月上旬、焦がれる季節へ衣替えしようとしていた。 ツグミが歌えば、ヒヨドリは宙を舞う。散歩に夢中なお年寄り、熱心なランナー、「ふわふわドーム」で汗だくになって跳ねる子どもたち。「きれいに手入れされているし、良いよね」と遠藤さん。
「一番早く春を感じられるのが、ここですね」。同市の金子祥宏さん(37)=@yosihiro.kaneko.52=も毎年この時季に訪れる。外出好きが高じてカメラを始め、約10年。県内の四季を探して回る。
カワヅザクラがとても好きで、思いを作品に託したという榎本乃里子さん(43)=太田市、@mega_tanuki。今年はさらにこんな願いも込めている。「コロナや戦争。暗いニュースが多いので、春の日差しとともに、少しでも明るい気持ちになれば」
肉眼で、一眼レフでドローンで、どんな形で捉えても心躍らせられる風景。でも、抱く思想や置かれた環境によっては、こんな光景に何かを感じられない人もいる。
ウクライナをじゅうりんするロシア。長引く軍事侵攻は、一般市民にまで多数の死者を出している。幼子も手にかけられている。
筆致に尽くし難い出来事はまた、海の向こうでのみ起こるものでもない。ちょうど半世紀前、県内の山岳アジトに「社会の変革」を目指して集まった若者たちがいた。連合赤軍と称した彼らは構成員同士で殺し合った末、あさま山荘事件を起こし、破綻した。
隣国の原発をも砲撃する大統領の目に、冬を耐え、咲き誇る花々の色は映るだろうか。50年前、厳寒の山々にこもった若き男女に、野鳥のさえずりは聞こえていただろうか。
〈願わくば そう 悲劇よりも 喜劇よりも 見ていたいのは 奇跡のような当たり前を照らす この日常〉(Ordinary days、milet)。いつもの景色が、明日も見られる世界でありますように。
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#グンマーの春
上毛新聞社は、写真共有アプリ「インスタグラム」の公式アカウント(@jomo ̄shinbun)=QRコード=で、折々の群馬を切り取った作品を募っています。多数のご応募、誠にありがとうございます。
「空からぐんま」は今回で終了し、4月からは「#グンマーの○○」と題した後継企画を始めます。
5月31日までは「#グンマーの春」がテーマです。集まった作品は断りなくインスタで転載したり、紙面で紹介したりします。
*ここでは5点の画像を紹介しています。下の動画も御覧ください。