公共施設整備で最初に行うのが施設構想作りで、周到に準備し、施設の生涯を通して望ましい姿を思い描くことが必要です。

 構想作りでは、地域に合った独自の構想を練る必要があります。最も大事なのは将来の需要を見極め、目標像を明確にすることです。長期的な視点から、建設費用だけではなく、長年にわたる維持管理費用の予測と運営体制の検討が必要です。特に、人口減少の傾向が続く状況でありながら人口や歳入に関して希望的で楽観的な見通しをすると、過剰な施設投資を招き、不要な維持費負担に長く悩まされることになります。災害の危険性も含めて広い視点から敷地の選定も適切に行う必要があります。これまで以上に知恵を集め、目標を明確にすることが重要です。

 費用については、設計費や工事費などの初期費用だけではなく、運用時の費用から除却費用までを含めた生涯費用で考えることが求められます。一般に、一つの施設を50年間良好な状態で使うエネルギーと維持管理費用の総額は、建設費の3~5倍と言われています。導入コストが多少かかっても耐用年数が長く、エネルギー効率の良い材料や機器を使うことで維持管理費は削減できます。

 光熱費を例に取ると、建物の断熱性能と冷暖房効率は相関関係にあり、断熱を強化すれば熱損失が小さくなり冷暖房費は減少します。断熱費は導入時だけですが、冷暖房費は施設が存在する限り続きます。余談ですが、既存建物の断熱性能を上げることなく学校の教室にエアコンを設置するだけでは、熱効率が悪く不経済ということになります。

 周辺施設の状況と密接に補い合う関係をつくれば、整備効果は倍加します。ところが、同じ自治体が管理していながら、隣接する道路や河川、公園などとの間に調整が全く取られず、機能的にも意匠的にも調和が図られていないことは珍しくありません。計画時から関連部局が集まって統合的なプロジェクトチームを組織することが良好な環境への第一歩です。チームを事業決定権を持つ組織として位置付けることが事業実現につながります。

 建物余りは今後も続きます。新築を前提とせず、既存施設の再利用や増築あるいは減築の可能性も十分検討すべきです。新築一辺倒のこれまでは、建築の再利用は当座の間に合わせ策とみなされ、質の低いものと考えられてきました。しかし欧州での事例に加え、日本でもリファイニング建築や再生建築のように質の向上が実現されています。

 理念として描かれる施設の構想を具体的な形にする段階が設計です。理念がどの程度実現するかは設計に大きく左右されます。優れた設計者はどのように選べば良いのでしょうか? 次回から設計者の選定方法について述べます。

 【略歴】1979年、県入庁。定年退職後も全国の自治体や各種団体の設計者選定に関わる。主な受賞歴に土木学会デザイン賞、これからの建築士賞など。

2022/4/10掲載