《前橋市 山本龍市長に聞く》「生きやすい街つくる」 挑戦できる都市に 改革向け県と連携
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 2月の市長選で山本龍氏(60)が、現職として34年ぶりに3選した。新しい価値の創造を掲げ、先端技術による交通弱者の移動手段確保や民間を巻き込んだまちづくりを進める。3期目は人口減少や市街地再生などの課題にどう向き合うのか、取り組みを聞いた。 (聞き手 小渕紀久男・上毛新聞社編集局長)  -3期目の意気込みを。  初当選時の公約は1、2期目でおおむね完成できたと考えている。今回の市長選では「生きやすさ」を訴えてきた。世代、男女など34万市民それぞれ属性が違うが、「暮らしやすい」「子どもを育てやすい」などを含め、生きやすい街をつくっていく。8年間で感じた新たな社会課題の解決に向け、学んできたことを発揮していくステージだ。 ◎働く場を確保し若者の移住促進  -人口減少対策はすべての自治体の課題だ。前橋市の取り組みは。  社会増減で前橋はプラスだが、自然増に導くには子育て支援に尽きる。公約に結婚マッチングを掲げた。行政がやる仕事ではないとの意見もあるが、気軽に相談できる場所が必要だ。  放課後児童クラブの整備や保育所の運営、待機児童ゼロなどにも力を入れている。子育てと仕事の両立を支援し、子育て世代の負担をさらに軽減するため、現在は中学卒業までを対象としている医療費無料化の対象を、2021年度から高校生まで拡大を目指す。  若者の定着やUターンなどを促すため、企業を誘致し働く場を確保する。ソフト面では、U・I・Jターンに向け、高校生を対象とした体験型企業説明会の開催や市内6大学連携による就職支援、就職奨励金の交付などを行う。企業誘致や起業支援、テレワークにより、若者が働きたいと思うような魅力ある仕事をつくり移住を進めたい。  前橋に誇りを持ってもらうことも重要だ。前橋の眠った宝を磨き、魅力発信やシティープロモーションに積極的に取り組む。例えば、赤城南麓では古民家に若者が集い新しいチャレンジが生まれている。移住コンシェルジュが多様な人たちを呼び込み、この5年で47人が移住した。さまざまなチャレンジができる都市にしていきたい。 ◎未来の市民へ再開発にルール  -中心市街地の再開発が本格化している。  民間主体の再開発事業が活発だ。まちなかに住む人やオフィス・飲食店などが増え、新たな人の流れを生むことでにぎわいの再生につながってきた。  JR前橋駅北口地区は今年夏ごろ着工予定だ。マンション約200戸のほか、民間の飲食店や市の子育て支援施設(一時預かり事業)を設置する計画で、駅周辺の活性化や鉄道利用者の利便性向上が期待される。  -4番・8番街区の再開発は何度も計画が頓挫してきた。  長年の懸案だった4番街・8番街を含む「千代田町中心拠点地区」の再開発は昨年9月に準備組合と事業協力者が協定を締結し、事業内容を検討している。私も初当選時には計画を白紙にしたが、あれは民間主体の再開発ではなく、市の駐車場を何にするかという公共事業の理論だった。  今回は三十数人の地権者が土地を組合に提供し、新しい価値を生んでいこうという意思と街に対する情熱を持って参加してくださった。市も地権者の1人として加わり、その思いに応えたい。市市街地総合再生計画に基づいて国、県と財政支援をしていく。まちづくりを担う民間団体、前橋デザインコミッション(MDC)の設立など街に関わろうとする民間の意思も実ってきた。  ただ、一定のルールがなければ乱開発につながるので、未来の市民への約束としてまちづくりのルール「アーバンデザイン」を作った。さまざまな開発が調和の取れたものになり、1世代後には前橋は変わる。街というのはその位の時間軸で作り上げていくものだ。 ◎マース構築進め交通弱者を支援  -交通弱者の移動手段確保に取り組む。誰もが利用しやすい仕組みにできるかが課題だ。  外出は基本的人権で、外出支援は1期目からのテーマ 。免許を持ちたくても運転できない高齢者や障害者 、妊婦も交通弱者だ。交通政策=まちづくり=生きがいづくりと考えている。  2022年にはMaaS(マース)によって 前橋を便利に外出できる街にする 。例えば、郊外の人が前橋赤十字病院( 朝倉町 )に行くのにマイタクでの相乗りなら1人1回500円、単独上限千円まで支援している。けれど赤城山頂から日赤までだと往復1万円は掛かり、とても足りない。  18年度から、NTTドコモと人工知能(AI)を利用した乗り合いタクシーの配車システムの実証実験を始めている。いろいろな場所に寄って乗り降りしてもらうことにはなるが、マイタク利用と合わせれば、安く遠くに行くことができる。  本年度は経済産業省と国土交通省の支援を受けて前橋版マースの構築に取り組んでいる。20年度は決済機能の追加など機能を拡充し、22年には外出困難者をドア・ツー・ドアで運べる。 ◎スローシティーブランド化応援  -最後の合併から11年が経過した。旧4町村の振興について考えは。  市産業振興ビジョンに基づく地域産業の活性化や雇用の確保など、一体感のある施策を進める。要望のある産業団地も造成していく。産業とはいわゆる第2次産業だけではない。観光や農業も大切だ。  旧4町村のほか芳賀北部も含め、歴史や自然、食文化を大切にするスローシティーのビジョンの下で新しい産業、暮らし方の提案をしている。古民家を再生した民泊など新たな取り組みをブランド化すれば、小規模の畑でもスローシティーエリアで生まれた新たな加工品として付加価値をつけられる。  今までの産業構造では考えられなかった、小規模だけれど高付加価値な暮らしにより、移住人口と関係人口の増加は大いに期待できる 。むしろ平野部より赤城南麓の方が進んでいる。こうしたチャレンジは若い人も引き寄せる 。旧勢多郡の合併した地域を新しいステージで応援していきたい。 ◎六供清掃工場の長寿命化目指す  -六供清掃工場の延命化が完了した。  延命化工事は、16年度から4年間かけて、今月完了した。三つの焼却炉をはじめ、主要な設備を更新して、老朽化で低下していた焼却能力を、当初の焼却能力まで回復できた。  清掃工場は選挙の争点にもなったが、可燃ごみは18年度までの7年間で17%減った。今の炉の処理能力は計405トンだが、市民の努力でさらに減量できれば次期清掃工場の規模を小さくできる。今後も減量化を進め、焼却炉の負担を軽減し、当初の稼働目標期間だった15年間からさらに10年程度の長寿命化を目指していく。  その先を予測した上で、どこにどんな炉をつくっていくのか。行政の手の内を見せ、ダウンサイジングしてこの程度の炉が必要だと市民に説明し、建設予定地選定へ検討していきたい。  -県との連携を呼び掛けている。  山本一太知事の財政運営方針の中で、県と市が同じ施設を持っていてもしょうがないとの考えがある。前橋は35市町村の中でも一番県有施設がある。山本県政と前橋市政との連携が、どう市民サービスや行財政改革に資するのかというのは、ぜひ期待してほしい。 ◎歴史都市前橋の景観形成を推進  -歴史を生かしたまちづくりを新たな政策として掲げている。  前橋学センター長の手島仁さんが「私たちが暮らす街は歴史都市だった」ということを市民に覚醒させた結果、前橋学市民学芸員の養成は7期までに295人、前橋学ブックレットは21巻発行できた。臨江閣と塩原家住宅の国重要文化財指定や、前橋四公祭や新陰流流祖祭など顕彰イベントにも取り組んできた。  集大成として、国土交通省の「歴史まちづくり法」を活用し、新しい前橋の景観形成に取り組む。「歴史的風致維持向上計画」を作ることにより国から重点的な支援を受けられる。新年度から都市計画部に推進部署を設置し、計画を作る。この仕組みを活用し、水戸市は水戸城の大手門を復元した。費用は10億円で、国補助が7割、残りは市民の寄付。歴史へのプライドを醸成すれば寄付も集まる。  -平和資料を収集・展示する「あたご歴史資料館」が3月末で閉館し、市が資料を引き継ぐことになった。  昨年11月に「前橋空襲を語り継ぎ、平和資料を収集展示の形の検討会」が発足した。検討会から今年12月ごろ提言してもらうことになっている。市民と行政がそれぞれ取り組んできた戦争や前橋空襲を語り継ぐ活動が一つの実を結ぶものと期待している。前橋には公的な平和資料館がない。爆撃を受け、焦土と化した前橋とすれば、戦争被害のさまざまな資料が散逸する前に、後世へと伝えるのは私たちの責任だろう。  -地方財政は厳しい。新たな税収増加策は。  身の丈に合った、やりくりする財政が重要だ。投資については必ずリターンがくることを前提に考え、事業を構成している。道路一つ取っても、固定資産の価値が上がり、店舗が増えることで税収が増える。  西善・中内や駒寄スマートインターチェンジ(IC)周辺で産業団地の造成に着手して雇用の場を確保するほか、企業の経営支援や雇用対策、空き家対策や移住への取り組みを進め、産業活性化や人口減少の抑制により税収を確保したい。市有施設のネーミングライツなども継続する。 【プロフィル】  やまもと・りゅう 草津町出身で中学高校時代を前橋市で過ごす。故小渕恵三元首相の秘書を経て1995年県議選で初当選し通算4期。2012年市長選にくら替えし、初当選。現在3期目。早稲田大卒

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