《「探る 考える」林業再生 第2部(下)利用》林地残材 再生エネに CO2削減効果に期待
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 国は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標としており、木質バイオマスエネルギーの活用が注目される。現在、県内で活用する自治体は4市町村だが、県は30年度までに8市町村に増やしたい考え。中之条町は役場庁舎などのボイラーで木質チップを燃料として使い、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減。川場村は発電と廃熱によるイチゴの温室栽培に活用している。木材燃料が化石燃料の代替となれば、地球温暖化対策やエネルギーの地産地消が大きく前進する。
◎地の利生かす
 木質チップは、建材などに向かない低位品や製材時の端材などを砕いたもの。中之条町では現在、木質バイオマスボイラー3基が稼働。暖房や給湯だけでなく、熱交換する仕組みで冷房にも活用している。
 役場と保健センターの共同利用のボイラーを2019年12月に設置した。吾妻郡内2カ所から1キロ当たり10円前後でチップを購入。国への補助金申請時の16年度に比べ、ほぼ試算通りに年間130万円の燃料代の削減が実現した。
 導入の背景には、間伐材など山に放置された林地残材を有効活用する狙いがある。原料の安定調達のため町は今後、木材活用センターを設立する計画。チップの自前での加工と併せ、製材可能な丸太を販売して林業者の所得向上を目指す。
 燃料の転換は環境面でも優れている。町のCO2排出量は19年度末で13年度比31・3%減となっている。ボイラー3基がフル稼働した場合は5ポイント分の削減効果があるという。
 町の面積の約9割を森林が占めており、町総務課は「地の利を生かした再生可能エネルギーの活用で町の木材を循環させ、地域を活性化させたい」とする。
◎新たな雇用
 川場村は、ウッドビレジ川場(社長・外山京太郎村長)が運営する木質バイオマス発電にチップを使う。発電量は45キロワット時で、17年に稼働した。村と交流のある東京都世田谷区の40世帯に売電している。また、発電に伴う廃熱を広さ千平方メートルの温室で利用。イチゴ栽培に取り組み、地域に新たな雇用も生み出した。
 同社は木材コンビナート製材施設でチップ製造も手掛ける。利根沼田森林組合が集めた丸太を年3千~4千トンのチップにし、自社の発電や県内外の木質バイオマス発電所に販売する。
 外山村長は「木材の需要がなければ山の手入れが進まない。高評価の米『雪ほたか』も水や空気といった自然環境があってこそ。山の土砂災害対策など森林はすべてにつながる」と意義を語る。
 チップ利用を進める両町村だが、機械トラブルが生じやすいのが共通の課題のようだ。含水率によって燃焼に差が生じたり、チップの大きさによって機械の途中で詰まったりする。石油燃料とは異なり、固体の燃料を使って装置を動かす技術は発展途上で、試行錯誤が続いている。
◎燃料として利用促進 木質ペレット 木材の液体化
 木材の燃料としての利用で、粒状の木質ペレットにしたり、液体化を試みたりする動きもある。上野村は2011年にペレット工場を稼働。設備を増強し、現在は年1600トンの生産能力がある。製品は1キロ36円で販売し、灯油価格が1リットル72円以上だとペレットの方が安い計算だという。公共施設を中心に村内に80台のペレットストーブがあり、うち20台は導入費を補助して村民に普及させた。薪ストーブのように燃料を頻繁に入れる必要がなく、タンクから自動投入が可能だ。
 村内の公共施設などでは、ボイラーの燃料にペレットを活用している。
 村きのこセンターにはペレットを燃料とするガス化発電設備があり、電気と熱をキノコ栽培に利用。余剰電力は売電し、無駄のない仕組みだという。村振興課は「村の山は急峻(きゅうしゅん)な所が多い。村が支えなければ林業は赤字になる」とし、林業振興に力を入れる理由を説明する。
 みどり市は、製材過程で出る端材から製造されたペレットを活用する。再生可能エネルギーの積極的な利用につながるとして、ボイラーのリース事業を展開。市民へのペレットストーブ導入補助も行っている。こうした取り組みを始めたのは、市内にあるわたらせ森林組合の地域材加工センターに15年、ペレット工場が完成したのがきっかけだ。
 ペレットの安定的な供給を見込み、14年に農家の園芸施設にボイラーを試験導入。市が初期費用を負担し、国民宿舎サンレイク草木や民間企業などに計11基のボイラーが設置されている。
 一方、バイオマス燃料開発のエムラボ(上野村、三枝孝裕社長)は木材の液体化に挑戦している。独自開発の装置で圧力をかけ、木くずを蒸し焼きにして発生した気体を冷やし、抽出する仕組み。装置を1台1千万円程度、軽トラックに積める大きさとする計画で、21年度中の販売を目指す。
 液体燃料は、木材の搬出コストを考慮し、林業の現場で発電機に使うことを想定している。災害時にも持ち運ぶことができ、石油が手に入らない場合に役立つとみている。三枝社長は「液体の方が流通しやすい。山がカネになれば、木を切る人も出てくる」と強調した。
◎建築分野の県産材利用 「非住宅」で伸び悩み
 建築分野の県産材の利用状況はどうなのか。一般住宅の8割程度は木造だが、住宅メーカーは安定調達を優先したり、JAS認証工場を求めたりするため県産材の流通は限られている。大規模な建物など非住宅分野での木造率は1割程度。公共事業では林業対策で地元産材を指定する場合があるが、公共事業自体が減少し、利用は伸び悩んでいる。
 利用に積極的な住宅メーカーは自社に加工工場を整備し、技術を磨く。沼田市の斉藤林業(斎藤英之社長)は県産材で建てる家にこだわり、約15年前に丸太を使い切る体制を整えた。丸太の芯を中心とした部分は柱など構造材にして、それ以外は建具や家具にする。木材乾燥のために整備した自社の燻煙(くんえん)乾燥炉の燃料は重油ではなく、端材を使うことでコストを抑えている。
 木造住宅では、木の含水率を下げる技術が出来を左右する。斎藤社長は「木を選ぶ職人、乾燥させる技術などが必要だが、地元の木を使い切ることが環境を守ることになる」と話す。
 県は「ぐんまの木で家づくり支援事業」を通じ、2007年度から県民に県産材利用を直接促してきた。19年度までの実績で、県産材約15万立方メートルを使用したことになる。本年度で廃止となり、業者に別の形で補助する事業に切り替える予定だが、業界関係者からは「林業県を目指すことに逆行する」との声も上がる。
 非住宅分野のうち、公共建築物などでは木材利用促進法に基づき、県は県有施設の木造化に力を入れている。ただ、公共事業は縮小傾向にあり、県有施設などにおける19年度の県産材利用実績はピーク時(02年度)の74%減となる1940立方メートルだった。「森林環境譲与税」が19年度に市町村の財源となり、木材利用の拡大が進むのか注目される。
◎理解者増やす努力必要 中之条支局 関坂典生
 関東一の森林面積がある本県だが、取材のたびに林業活性化の難しさに気付く。利用期となった木の多くが放置された状況を転換させる糸口は何か。使わないから木を切らないのか、切らないから使わないのか―。生産者も加工業者も利益につながらなければ行動に移しにくい。県民の意識と行政の支援に活路を見いだしたい。
 上毛三山に代表される山々の形姿は郷土愛を育む要素だが、山を構成する樹木まで意識していない気がする。子どもたちが林業や環境を学ぶのと併せて木に親しんでもらい、「使う意識」を醸成していくことが大切だ。上野村が燃料として使いやすいようにとペレット加工に取り組むように、県産材を身近に感じてもらう機会の提供も欠かせないだろう。
 県産材を使う家づくりで県民に直接補助する事業(構造材で最大60万円)に、県は年間3億円程度の予算を充ててきた。一定の利用はあったが、県産材の消費拡大は限定的として本年度で終了する。県民が地元の木を考える機会を一つ失ったことはとても残念だ。
 費用対効果を踏まえた施策の展開は大事だが、林業の理解者を地道に増やすことが、県産材利用の拡大と林業活性化の機運の高まりにつながるだろう。

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