2019/02/05【三山春秋】映画評論家と聞き、淀川長治さんを…
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 ▼映画評論家と聞き、淀川長治さんを真っ先に思い浮かべる人は多いだろう。お茶の間で人気があり、映画番組の最後を締める「サヨナラ」の連呼はインパクトがあった

 ▼同世代の映画評論家に旧新田町出身の田中純一郎さん(1902~89年)がいる。淀川さんとは対照的に目立つ存在ではなかったが、映画を学問的に捉えて地道な調査を続け、日本映画史の研究に生涯をささげた

 ▼主著『日本映画発達史』(全5巻)は「映画人のバイブル」とも呼ばれる。行き届いた実証に基づいており、今も日本映画史に欠かせない重要な基礎資料になっている

 ▼太田市で先月開かれた田中さんの企画展「映画史に残る著名人からの書簡展」に足を運んだ。淀川さんをはじめ監督や俳優からの手紙には資料提供に感謝する文面も多く、功績の一端がうかがえた

 ▼田中さんの名を冠した地元での映画祭は2006年の第9回を最後に閉幕し、以降は大々的な顕彰事業は行われていない。その点からいえば、今回の企画展は規模は小さいとはいえ意義深いものだった

 ▼映画評論家の佐藤忠男さんはかつて、田中さんのことで懸念を抱いていた。いい仕事をしたが、大衆の人気者タイプではないゆえ、一般の人からは忘れ去られてしまうのではないか、と。ささやかでも足跡を伝える取り組みを続ける必要がある。

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