2019/03/14【三山春秋】心引かれる建築物の一つ、前橋…
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 ▼心引かれる建築物の一つ、前橋市の「広瀬川美術館」(国登録有形文化財)のかけがえのなさに、改めて気付かされる経験をした

 ▼もとは洋画家、近藤嘉男(1915~79年)が外地での4年余りの従軍生活を終えて帰郷後、48年に建てたアトリエ兼住宅だ。近藤はここで、自身の絵画制作とともに、子どもたちを対象にした絵画教室ラ・ボンヌを32年にわたって続け、延べ3000人もの生徒が巣立った

 ▼近藤の没後、遺族がこの建物を補修・改築し、私設美術館として開館したのは97年。さまざまな企画展示が行われ、訪れるたびに、教室の名残がある懐かしい雰囲気に気持ちが安らいだ

 ▼アーツ前橋で開かれている「近藤嘉男と憧れのヨーロッパ航路」展は、近藤が49歳から60歳にかけて5度にわたりヨーロッパを訪ね、長期滞在した時の作品と、日記、紀行文、スクラップなどを紹介している

 ▼「相当の覚悟だったはず」と長男で広瀬川美術館館長の近藤浩通さんは言う。経済的に余裕はなく、費用の捻出に苦労した。「そうまでしても、ヨーロッパで絵画を学びたいと思ったのでしょう」

 ▼細かな字で埋まった日記などからは、近藤の画業に掛ける並々ならぬ情熱と心の葛藤が伝わる。そうやって誠実に生きた画家の素顔に触れると、活動の場となった建物は一層、大切に思えてくる。

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