2019/03/24【三山春秋】以前から一度やってみたいと思って…
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 ▼以前から一度やってみたいと思っていた。前橋の臨江閣北側の広瀬川に架かる石川橋を川底から眺めるという、願ってもない機会に恵まれた

 ▼流水が止められるのに合わせて行われた見学会でのことだ。経年のため傷みは目についたが、大正期の面影は変わらず、延長12メートルほどの小さな橋に一層、親しみを感じることができた

 ▼つくられたのは1915(大正4)年。糸のまち前橋の製糸販売額が急激に伸びる時期だ。広瀬川の北部に集中していた製糸工場で生産された生糸、繭を南部に運び、鉄道輸送するため、橋は重要な役割を担った。石川橋もその一つである

 ▼詩人、萩原朔太郎が毎日のようにこの橋のあたりを散策した。朔太郎に師事した伊藤信吉さんが心を寄せた場所でもあった。周囲の落ち着いた風情に愛着を持つ市民は少なくない

 ▼橋は区画整理による市道の拡幅に伴い秋にも架け替えられることになった。すぐ隣で新橋の建設工事が始まっている。惜しむ市民の声を受け、市はこれまでのデザインを踏襲し、欄干の一部を別な場所に保存する計画もあるという

 ▼橋をあのまま保存できないのは残念だ。が、前橋のれんが倉庫が次々と壊された時とは違い、せめて雰囲気だけでもと配慮されたことは救いだった。人々の記憶が刻まれた建物や街並みを残す機運がより高まればと願う。

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