2019/04/10【三山春秋】1万円札といえば福沢諭吉、という…
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 ▼1万円札といえば福沢諭吉、というイメージがあまりに強く、別な人物ではすぐになじめないのではないか

 ▼新紙幣の刷新で肖像が変わるというニュースに、そんな感想をもった。が、埼玉県深谷市出身の官僚、実業家の渋沢栄一(1840~1931年)と知り、心配はすぐに消えた

 ▼生涯で500もの企業の創設に関わり、近代日本資本主義の父と称される突出した経済人である。その事績は、時を経てますます輝きを増して見える

 ▼教育、社会福祉、国際交流にも積極的に取り組んだ歴史に刻まれる偉人として、何冊も伝記が出版されている。著書『論語と算盤そろばん』の言葉で象徴されるような「道徳と経営は合一すべきである」という理念とその実践は広く紹介されてきた

 ▼そのなかで、さらに強い光を当ててほしいと思うのは、絹産業への多大な貢献である。大蔵省時代には官営富岡製糸場の建設を主導し、島村(伊勢崎市境島村)の日本で最初の蚕種専門会社、島村勧業会社の設立を指導するなど、使命感を持って振興に尽くした

 ▼その基にあるのもまた、得た利益を社会全体の発展のために使うという「公益」の精神だ。蚕糸絹業に携わる人たちの生産活動に少なからぬ影響を与えている。官民ともにモラルの欠如による不祥事が相次ぐなか、渋沢の生き方がその戒めになればと願う。

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