2019/04/14【三山春秋】『万葉集』ほど古来、日本人に…
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 ▼『万葉集』ほど古来、日本人に親しまれてきた歌集があるだろうか。〈青春の元気にあふれ、熱と力に充ち(略)雄大豪壮のことは無比であり、後世れと比肩し得る歌集は一つもない〉。詩人、萩原朔太郎はこう断言した(『恋愛名歌集』)

 ▼万葉集を典拠とする新元号が決まった後、歌人、土屋文明の『万葉集上野国歌私注』を読み返し、朔太郎の言葉通りの、生き生きとしておおらかな歌の数々を久しぶりに堪能できた

 ▼万葉集巻十四には東国の歌「東歌」が230首収められている。このうち国名判明歌は90首(12国)。国別では上野国の歌が25首と飛び抜けて多い。東日本最大の古墳王国であり、文化の先進地だったからこそと言えるだろう

 ▼東歌への人々の関心の高さも大きな特徴だ。県内の万葉歌碑の数は全国でも上位の70基以上といわれ、その一つ一つに、古代万葉びとの心に触れたいという願いが込められている

 ▼〈伊香保かみな鳴りそねが上(へ)には故ゆえはなけども子らによりてそ〉。上野国歌のなかの一首について、文明はこうつづる。〈(雷の多さを)詩的に生活に取り入れてゐる万葉時代といふものの奥深さは、かへり見てもよかりさうに思はれる〉

 ▼多くの優れた詩人、歌人、俳人を輩出し、詩の国と言われる群馬の特質のルーツは、この時代にまで さかのぼることができるのではないか。

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