2019/05/09【三山春秋】読み返すたびに新しい発見があり…
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 ▼読み返すたびに新しい発見があり、刺激を受ける文章がある。今年、没後50年となる元萩原朔太郎研究会幹事長、渋谷国忠さん(1906~69年)の「朔太郎の詩的遺産摂取のために」(『萩原朔太郎論』収録)はその代表例だ

 ▼研究者がとるべき姿勢として強調した次の言葉にとりわけ引かれる。〈花を花として見るばかりでなく、それを咲かせた有機体のいのち全体の中で、その栄養のぐあいまでも含めて、その花をとらえなければならない〉

 ▼「栄養のぐあいまで」とは単に日常生活を掘り下げることではなく、「時代をうつす鏡」として作品を徹底して読み解く必要がある、との主張である

 ▼長野県出身の渋谷さんは、前橋市立図書館長として朔太郎資料の収集・保存と研究の基礎づくりに心血を注ぎ、64年に設立された朔太郎研究会運営の中軸として奔走。「朔太郎忌」開催などに力を尽くした

 ▼〈(研究会にとって)かけがへのない心棒のやうな人だった。(略)地道で目立たぬ持続的な営みの中にこそ、真の「文化」の生きた姿があった〉。同研究会長を長く務めた故那珂太郎さんは、渋谷さんの追悼文で功績をたたえた

 ▼47回目の朔太郎忌(11日、前橋テルサ)では、多彩な芸術活動をテーマに対談や朗読劇が行われる。渋谷さんが求めた「時代精神」に迫る研究・顕彰につながってほしい。 

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