2019/05/12【三山春秋】「養蚕安全」と書かれた...
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 ▼「養蚕安全」と書かれた貫前神社(富岡市一ノ宮)のお札を手にして、背筋が伸びる思いがした。年初に訪れたときのこと。危機にある絹産業の取材をすることが多く、その振興を願う者の一人として身近に祭りたいと思っていた

 ▼蚕の飼育は難しく、天候などにも左右されるため、養蚕農家は蚕を守ろうと養蚕の神を信仰し、豊作を祈った。養蚕、機織りの神が祭られる同神社はその代表格として、多くの人々の心の支えとなってきた

 ▼そんな蚕神も蚕糸業の衰退に伴い忘れられるようになり、同神社で江戸時代から続けられてきた「養蚕安全祈願祭」は、1990年代から途絶えていた

 ▼しかし「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録を機に2016年に復活。今年も春の養蚕を前にした4月20日、参列者が良い繭ができるよう祈り、養蚕安全のお札を持ち帰った。祈願祭は、蚕神を若い世代に知ってもらう機会にもなり、大きな意味をもつ

 ▼富岡製糸場世界遺産伝道師協会がまとめた「群馬の蚕神めぐり」は、蚕神への理解をさらに深めたい人にとって頼りになるガイドブックだ

 ▼会員が県内全域で行った総合調査をもとに、石像、文字塔など蚕の神々を見て回る12のコースを紹介している。車でたどると、時代ごとに培われた 知恵や気概が伝わってきて、絹文化の奥深さを実感する。

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