2019/05/13【三山春秋】千代田町と邑楽町境に広がる平地林…
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 ▼千代田町と邑楽町境に広がる平地林を自転車で走った。風が通り過ぎると白い波のように新緑が揺れた。ここに20年前まで、不法投棄の山があったとは信じられない

 ▼ごみの山を10年がかりで片付けたのは近くに住む川原幸司さん(80)だ。所有者100人超から委任状をもらい、今も下刈りを続けて22ヘクタールを美しい平地林に変えた

 ▼川原さんと妻の幸子さん(78)が主宰する里山クラブの活動は県環境賞、上毛社会賞など多くの賞に輝いた。林の中にツリーハウスや遊具を作り、自然観察の楽しみを説いた。里山学校では園児から高校生延べ6000人を受け入れ、植樹体験や野外活動の場を提供した

 ▼活動資金の多くは自身の退職金と年金から出す。ツツジやヤマザクラなどの花が楽しめる植樹も続けている。だが盗掘は絶えない。時折、林内へ不法投棄されることもある。今も1日4回の巡回を欠かさない

 ▼川原さんは一時、NPO法人化して自身の活動を引き継いでもらうことを真剣に考えた。書面を整え、役員まで内定したが、思いとどまった。やはり、所有者が管理するのが筋だと思ったからだ

 ▼老いは誰にも訪れ、命には限りがある。川原さんは昨年末から「林をお返ししたい」と所有者へあいさつ回りを始めた。平地林という宝をどう生かし、後世に伝えるのか―。重い宿題が出されている。

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