2019/05/24【三山春秋】「里沼」。さとぬまと読む。心地よい…
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 ▼「里沼」。さとぬまと読む。心地よい響きをもつこの言葉は、人の暮らしに密接に結びつき環境が守られている里山と同じような存在の沼に、新しい光を当て考え出した概念なのだという

 ▼文化庁の「日本遺産」に館林市の「里沼(SATO-NUMA)」が認定された。この地ならではの自然、文化を一つのテーマに沿ってまとめた同市の、地域資源を丁寧に見つめ直し受け継いでいこうという姿勢に感銘を受けた

 ▼とりわけ注目したのは、市内に点在する沼のうち、代表的な茂林寺沼、多々良沼、城沼を取り上げ、長い歴史のなかで培われてきたそれぞれの特徴を、「祈り」「実り」「守り」と位置づけたことだ

 ▼国名勝「躑躅つつじケ岡」や小麦、川魚の食文化など、関連する有形・無形の文化財とその背景にある物語をたどると、自然を象徴する里沼との共生により磨き上げられた館林の豊かな「沼辺文化」が浮かび上がる

 ▼〈田とすかれ畑と打たれてよしきりもすまずなりたる沼ぞかなしき〉。同市出身の小説家、田山花袋(1871~1930年)に、生地近くの城沼の変わりつつあった風景を愛惜する歌がある

 ▼折に触れ帰郷し、小説「ふる郷」をはじめ多くの随筆や紀行文などで故郷の風物や思い出をつづった花袋にとって、身近な「里沼」は、かけがえのない心の原風景だったのだろう。

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