2019/06/06【三山春秋】〈私はいつも思うのだが、身近な…
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 ▼〈私はいつも思うのだが、身近な小さい事実の中に大きな真実が潜んでいるのではないか、と〉。民俗研究家、都丸十九一さん(1917~2000年)の言葉だ

 ▼『昆虫記』で知られるファーブルが小さな観察から出発して広く深い昆虫学に達したことや、ある先輩の一家の克明な年中行事の記録を例に挙げ、そこにこそ〈普遍性がある〉と指摘した(『一郷一学ガイドブック』)

 ▼それは、群馬の民俗調査で多くの先駆的な業績を残した都丸さん自身の研究姿勢であり、生き方の基本でもあったのだろう

 ▼岐阜県出身の画家、熊谷守一(1880~1977年)の初期から晩年までの画業をたどる「熊谷守一 いのちを見つめて」(県立館林美術館)の展示作品にも重なるものを感じた

 ▼76歳で軽度の脳卒中を起こし外出を控えるようになってから、東京の自宅の庭にいる虫、鳥、猫など身近な生き物や花、風景などを繰り返し描いた。色や形はそれまでにも増して平明になり、小さなものへのまなざしに深みと温かみが加わった

 ▼「朝のはぢまり」という89歳の時の小品がある。中央が白、その外側に黄、青の同心円が描かれている。朝、目が覚めた時、最初に目に入ってきた光だという。自然の観察を重ね、本質を見つめてきた画家の、命あるものを 慈しむ思いがそこに凝縮されている。

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