2019/07/11【三山春秋】〈除夜の湯に肌触れあへり生くるべし〉…
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 ▼〈除夜の湯に肌触れあへり生くるべし〉。元ハンセン病患者で草津町の栗生楽泉園に入所していた村越化石さん(1922~2014年)の代表句である。俳人協会賞や蛇笏賞などを受賞、「魂の俳人」と呼ばれた

 ▼こんな句もある。〈寒燈かんとうを消すとき母につながれり〉。隔離された生活を送りながら、母への思いは強かったのだろう。病気への偏見と差別は元患者だけでなく、家族にも及んだという

 ▼ハンセン病患者の隔離政策による家族への差別被害を認め、国に損害賠償を命じた判決について、安倍晋三首相は控訴しないと表明した。原告側は首相の謝罪と一律に被害を回復する制度創設を求めている

 ▼このニュースに接し、18年前の元患者による国賠訴訟を思い出した人もいよう。隔離政策を違憲として国に賠償を命じた判決に、小泉純一郎首相は控訴を断念し謝罪した

 ▼控訴に傾いた流れを転換し、首相の政治決断を主導したのは当時の福田康夫官房長官だった。後に福田氏は本紙のインタビューで、楽泉園の後援者を通じてハンセン病のことをよく知っていたことが参考になったと述懐している

 ▼楽泉園の元患者は高齢化が著しい。懸念されるのは差別や偏見の歴史の風化だ。いじめや虐待など個人の尊厳が傷つけられる問題は今でも後を絶たない。願いは人権が守られる社会である。

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