2019/09/08【三山春秋】「文学館ができたのに、ここを使わず...
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ▼「文学館ができたのに、ここを使わずに東京で賞の発表をするのはなぜか」。1993年9月、前橋文学館の開館記念講演会で、前橋市出身の詩人、伊藤信吉さんが指摘した

 ▼市制施行100年を記念して制定された萩原朔太郎賞(同市など主催)の受賞作発表が東京都内で行われることへの疑問だった。他の文学関係者からも「前橋から全国に文化情報を発信する姿勢がほしい」との要望が出た

 ▼主催者の一部には、都内のほうが発信のために有効という考えもあった。しかし、「地元から遠い存在になった」などという声を重視、市民や県民により身近なものにするため、96年の第4回から発表を前橋でと改めた

 ▼都内在住の選考委員の日程調整など課題があったが、2005年以後は、最終選考会、発表、授賞式のすべてを前橋で行うようになった。この方法で回を重ね、詩のまちは確実に豊かさを増している

 ▼今年の朔太郎賞選考委員会が5日、前橋文学館で開かれ、和合亮一さん(福島市)の詩集『QQQ』(思潮社)に決まった。発表会見には選考委員の5人全員が出席、選考過程で激論が交わされたことを明かし、それぞれの評価を丁寧に熱を込めて語った

 ▼緊張感に満ちた雰囲気に接して、現代詩の最高峰の賞がこの朔太郎の郷里で発表されることの意味の大きさをあらためて実感する。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事