2019/09/22【三山春秋】いい温泉とは、と問われると...
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 ▼いい温泉とは、と問われると、「温泉神社のあるところ」と答えたという。先月、78歳で亡くなったドイツ文学者でエッセイストの池内紀おさむさんが、今年初めに出た『湯けむり行脚』(山川出版社)で書いていた

 ▼湯の神が守っているのだから、ヘンな温泉があるはずがない、という理屈だ。神の意向によったかのような温泉のフシギさに引かれて、全国各地の温泉通いをしたのは30代半ばから50代にかけて。本県もたびたび訪れた

 ▼その時に書いた多くの訪問記のなかから100編余りを収録した同書では、草津、四万、万座、沢渡、霧積、鳩ノ湯温泉に加え、榛東村のガラメキ温泉跡まで取り上げ、独自の視点でそれぞれの魅力をつづっている

 ▼たとえば、特別な「温泉の迫力」を備えているという草津温泉については、早朝から湯畑あたりを温泉客が歩いているのを見て、こう受け止める。〈なぜか宿にじっとしていられないのだ。(略)「地霊」といったものがいて、人間の体内の奥深い何かに働きかける〉と

 ▼温泉文化のユネスコ無形遺産登録を目指す群馬発の動きが始まっている。世界に発信するに当たり、池内さんが注目した湯の神に、より強い光を当ててもいいのではないか

 ▼湧き出る湯への畏敬の念から生まれた温泉信仰もまた、日本の温泉文化の奥深さを伝える大事な要素である。

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