2020/01/12【三山春秋】「全人類のための世界の遺産」。…
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 ▼「全人類のための世界の遺産」。世界遺産条約前文のなかで、とりわけ強く引き付けられるのがこの言葉だ。一国の遺産も世界の人々が守る責任を負うのだという考え方に触れ、深い共感を抱いてきた

 ▼東京大学名誉教授の西村幸夫さんによれば、文化遺産を国際的なレベルで守っていかなければならないという意識は、戦争による遺産の破壊によってもたらされたという(東京大学出版会『世界文化遺産の思想』)

 ▼第2次世界大戦直後、国際平和のために定められたユネスコ憲章と、その文化遺産に関わる理念を一歩進めた「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(1954年ハーグ条約)が萌芽ほうがとなり、世界遺産の制度につながったと指摘する

 ▼年始早々、世界を揺るがすニュースに衝撃を受けた。米軍がイラン司令官を殺害したのに対しイラン軍が報復。ウクライナ旅客機を誤って撃墜する悲劇まで引き起こした

 ▼がく然としたのは、トランプ米大統領がイランの文化遺産への攻撃を示唆したことだ。これに対しユネスコがすかさず、米国はハーグ条約に署名しており、その違反に当たると批判した

 ▼イランには多くの重要史跡があり、22件が世界遺産に登録されている。「世界文化遺産の思想」の基にある、二度と無残な戦争を起こさせまいという理念に学び、平和を訴えたい。

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