2020/04/02【三山春秋】旧群馬町出身の歌人、土屋文明...
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 ▼旧群馬町出身の歌人、土屋文明の指導は厳しかった。後に門人となった故・清水房雄さんは19歳で初めて批評を仰いだ。順番が来るとたった一言。「平凡だね。はい、次ッ」。この言葉はずっと頭を離れなかった

 ▼文明には数々のエピソードが伝わる。作歌の上達法を尋ねた人を「俺が知りてえ」と怒鳴り飛ばした。初対面の学生を「下手だね。君は」と一刀両断した。真剣に歌人を目指す人には容赦なかった

 ▼一方で温かな一面も伝わる。叱咤しったされた学生が退会を申し出ると「惜しいね。歌というものは長くやっていると、上手下手は別として、君でなくては言えないことが言えるようになるものなんだ」と慰めたという

 ▼ことしは生誕130周年。斎藤茂吉に比べると愛唱性のある歌が少ないのが残念だが、妻への挽歌ばんか〈終わりなき時に入らむに束の間の後前あとさきありや有りてかなしむ〉など心に響く歌を残している

 ▼厳しい指導は多くの後進を育てた。冒頭に挙げた清水さんもその一人。叱咤を「もっと自分で考えろということなのだ」と捉えて精進し、歌壇を代表する一人となった

 ▼年をとると、真剣に叱ってくれる人のありがたさに気づく。新社会人の皆さんは、新たな環境に戸惑いを感じていることだろう。失敗を恐れず、上司や先輩の叱咤を前向きに捉えて奮起する人になってほしい。

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