2020/05/10【三山春秋】詩人・八木重吉の詩に「母をおもう」がある…
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 ▼詩人・八木重吉の詩に「母をおもう」がある。〈けしきが/あかるくなってきた/母をつれて/てくてくあるきたくなった/母はきっと/重吉よ重吉よといくどでもはなしかけるだろう〉。29歳で亡くなった重吉は家族をよく詠んだ

 ▼みどり市出身の詩画作家、星野富弘さんが頸髄けいずい損傷で入院中、母や姉にページをめくってもらい読んだのが重吉の詩集。読むと自分が素直になっていくのを感じたという

 ▼富弘さんは大学卒業後、体育教諭として中学校に赴任。クラブ活動指導中の事故で手足が不自由となり、一時は生死の境をさまよった

 ▼9年間に及んだ入院を支えたのが母の知野とものさん。体を動かせないことから来るいら立ちを何も言わずに受け止めた。ペンをくわえて文字を書く練習を始めると身動きせずにスケッチブックを支え、描くようになると傍らで思い通りの色が出るまで絵の具を溶いた

 ▼〈神様がたった一度だけ/この腕を動かして下さるとしたら/母の肩をたたかせてもらおう/風に揺れる/ペンペン草の実を見ていたら/そんな日が/本当に来るような気がした〉

 ▼知野さんは2年前、97歳で亡くなった。富弘美術館は昨秋、企画展「かあちゃん」を開催。同展は美術館が何度か打診したが、母の存命中は「恥ずかしい」と富弘さんが断り続けた展覧会だった。きょうは母の日。

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