2020/05/15【三山春秋】鳥のさえずりを言葉やフレーズに...
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 ▼鳥のさえずりを言葉やフレーズに当てはめて覚えやすくしたのを「聞きなし」という。ホトトギスは「特許許可局」、コジュケイは「ちょっと来い」。覚えていると本当にそう聞こえてくるから不思議だ

 ▼春の野原を歩くと、聞こえてくるのがヒバリのさえずり。「日一分、日一分、利取る、利取る」。太陽に貸したお金の利子を取り立てるために空高く舞い、鳴き続けているそうで、そうと知ればあの必死な鳴き声に同情したくなる

 ▼〈五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする。したたる空色の窓の下で、私の愛する女と共に純銀のふおうくを動かしたい〉

 ▼これは萩原朔太郎の詩集『月にえる』にある「雲雀ひばり料理」冒頭の一節。料理は朔太郎による創作らしく、愛しい女性と食べる特別なものだという

 ▼触発された短歌がある。〈前橋の「雲雀料理」を売る店をあまたたびわれ夢におとなふ〉岡井隆。〈雲雀料理の後にはどうぞ空の青映しだしたる水を一杯〉尾崎まゆみ。歌人が夢でたびたび訪問するほど料理は魅力的で、食後には青空を映した水がおいしいという

 ▼朔太郎の独白は〈私の生活にもいつかは一度、あの空に光る、雲雀料理の愛の皿を盗んでべたい。〉と続く。大空を高く飛んで姿の見えぬヒバリのように、朔太郎が差し出す料理のイメージだけが想像を刺激する。

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