2020/05/18【三山春秋】〈この年も蚕飼する日の近づきて...
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 ▼〈この年も蚕飼こがひする日の近づきて桑おほし立つ五月晴れのもと〉。これは当時の皇后美智子さまが1996年に養蚕が始まる喜びを詠まれた御歌みうた。皇室では明治時代から皇后による養蚕が行われてきた

 ▼歌が詠まれたこの年に皇居にある紅葉山もみじやま御養蚕所に初めて出仕したのが元県蚕業試験場長の佐藤好祐さん。1年かけて職務を引き継ぐはずだったが、前任者が急逝。儀式をどう進めたら良いかまったく分からなかった

 ▼資料を調べ、侍従らに前年までの様子を聞いたが自信はない。胸中を察した美智子さまは「これからは私も毎年1年生になりましょう」と佐藤さんのやり方で儀式に臨まれたという

 ▼皇室では孵化ふかしたばかりの蚕を羽ぼうきで飼育する道具に移す「御養蚕はじめの儀」に始まり、給桑、上蔟じょうぞく、初繭かき、「御養蚕おさめの儀」まで約2カ月かけて一連の行事が続く

 ▼美智子さまは皇室ブランド「小石丸」のほか、野蚕の「天蚕」も飼育された。〈葉かげなる天蚕はふかく眠りゐてくぬぎのこずゑ風渡りゆく〉などたくさんの歌を残している

 ▼伝統を受け継ぎ、皇后雅子さまは11日、初めて「御養蚕始の儀」に臨まれた。ことしは新型コロナウイルスの影響で作業する人を減らし、飼育は小石丸に絞った。皇后さまが養蚕をどうお感じになられたか。いつか御歌に詠まれる日が来るといい。

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