2020/09/13【三山春秋】60年余り前に出版された『日本の…
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 ▼60年余り前に出版された『日本のアウトサイダー』(中央公論社)で文芸評論家の河上徹太郎は、萩原朔太郎をアウトサイダーの「最も典型的な詩人」と紹介している

 ▼「アウトサイダー」とは一般には「局外者」「よそ者」を意味するが、〈社会の既成の枠からはずれて独自の思想をもって行動する人〉(「広辞苑」)でもある。河上は〈「異端」あるいは「幻(ヴィジョン)を見る人」〉と定義し、朔太郎を〈詩人がその本来の仕事の上で文明批評家であることを身を以(もっ)て示した日本最初の近代詩人〉ととらえた

 ▼同書では朔太郎とともに内村鑑三、中原中也、岡倉天心ら近代日本の個性的な思想家、文学者の功利を求めない批判精神を浮かび上がらせている

 ▼第28回萩原朔太郎賞にマーサ・ナカムラさん(29)=埼玉県出身=の『雨をよぶ灯台』が選ばれた。今月初めの発表会見で選考委員が「朔太郎が『月にえる』で震撼しんかんさせてくれたのに近い衝撃力をもって登場した詩人」と異能をたたえた

 ▼これを聞いて浮かんだのは、河上のアウトサイダーの定義だった。受賞詩集を読むと、まさに「幻を見る人」による、夢想と現実とが入り交じった世界である

 ▼振り返れば、毎年、受賞者の異彩を放つ表現に驚かされてきた。そのなかに、最年少の強烈な個性をもつ異端が加わったことを心から祝福したい。

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