2020/12/28【三山春秋】全国の地方紙を対象とした視察団に…
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 ▼全国の地方紙を対象とした視察団に参加して東日本大震災の被災地、福島県を訪ねた。廃炉作業が進む福島第1原発、放射性物質を含む土壌や廃棄物を保管する中間貯蔵施設を見学した

 ▼帰還困難区域に入ると、空間放射線量の数値がみるみる上昇する。住民を失った家の庭は草木が伸び、車のタイヤはぺしゃんこ。子どものいない学校は時間が止まったようだ

 ▼語り部の青木淑子さんは富岡町にあった県立高校の校長だった。退職して郡山市に戻ったところ、原発事故で旧知の住民が続々と避難してきた。「これは運命だ」。避難指示の解除を待って移住した

 ▼町には帰れない人がまだ1万人いる。「避難は国の指示だが、帰るのは個人の選択。帰れない人には古里を捨ててしまった罪悪感がある。町民に溝があって一つになれない。これが原発事故の大きな被害」と訴える

 ▼いわき市の漁師、新妻竹彦さんは放射性物質を含んだ処理水の海洋放出を憂慮する。「エゴと言われるかもしれないが、私は反対。来春にも本格操業になるところなのに風評被害が心配だ。いっそ誰にも知られずそっと流してほしかった」と胸中を明かした

 ▼本県への避難者は先月末時点で751人。来年3月11日で10年になるが、復興はいまだ途上にある。被災地の人々を忘れることなく、これからも思いを寄せ続けたい。

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